第三部 古都にけぶる月の姫
京都入り
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を教えてあげた構成員くらいで。幹部の中ではゲオルクとヘラクレスは私を煙たがっている側だ。
そんな構成員や幹部たちが、示し合わせて実行したっていうあたりが真相だろう。私を引きはがしておけば曹操もいずれ忘れていくだろうと考えたんだろう。結局、曹操は追いかけてきたみたいだけど。別に思惑がどうあれ、私は曹操が必要としてくれる間はずっと傍にいるつもりだけど。
「……これは、処分も検討するべきか」
「しなくていいよ。私は気にしないし」
口にした言葉は本心以外の何物でもない。基本的に私は嫌われ者だし、こういう扱いだって、毎日のように命の危険があった以前に比べればはるかにましなほうだ。
―――それに。追いかけてきてくれたことが分かった時、そんな思惑なんてどうでもよくなっちゃったから。だから、もういいんだ。
「それより、曹操のほうこそいいの?指揮取らなくて」
「ああ。指示は済ませてある。策のほうはゲオルクに、実戦指揮はジークに投げておいたから大丈夫だろう。これから大切な実験だというのに君が行方不明のほうが俺としては問題だ」
そうやって他人に押し付けて、私を優先しているからこそこういう風に仕組まれるんだと思うけど……きっと気が付いてないんだろうなぁ…。
でも、曹操がこうやって私を気にかけてくれる。それは少し涙が出てくるくらい嬉しくて。そうやって全てがどうでもよくなってしまう私も、きっと悪いんだろう。
「だったらどうするの?戻る?」
「……いや、ちょうどいい。霊脈の位置も確認しながら、少し歩いてみるとするか。君も京都は初めてだろう。土地感覚を掴んでおくのも悪くないとは思わないか?」
曹操の言っていることは確かにそうなんだけど……いい加減、読めてくる。
無理して私に「普通の楽しみ」を経験させようとしなくてもいいのに。だって私はとっくにそれを失ってしまった。今更、そんな身の程知らずの願いを求める気もないのだけれど。だけど、曹操の意思を無碍にするのもためらわれる。
「ん、分かった」
くるりと身をひるがえすと、ふわりとスカートの裾が浮き上がる。ああ、そういえば今日の私はいつもと服装が違うんだった。見えてないとは思うけど、一応気にするようにしろってジャンヌに言われたっけ。曹操のほうをうかがってみると、珍しい服装に驚いてはいるものの、そこまでといった感じだ。残念。そういえば曹操は珍しい私服姿だ。黒いズボンとシャツに、藍色に近いカーディガンを羽織っている。いつもなら英雄派のユニフォーム(?)である学生服の上に羽織った漢服なのに。理由を聞くと「目立つから」と着替えさせられたからとのこと。いっそ学生服だけのほうが紛れられたと思うんだけど。けどまあ、確かにその辺の大学生のようには見えるかもしれない。
そんなことを思いながら、
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