第三部 古都にけぶる月の姫
京都入り
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言っても実際の速さは50mを8秒くらいで走りきれるくらいではあるんだけど。身に染みついた無意識の鍛錬の成果かな?
誰も見ていないのをいいことに走り出す。ちょっと走りにくいのは服装のせいだけど。
まあ、今の私は普通の人の目には黒い風くらいにしか認識できないだろう。それくらいのスピードは出せる。これでも人間相手の暗殺だってしてきた暗殺者の端くれだ。
それに―――どうやら、尾行られているみたいだし?
一気に町の中を駆け抜けて、人気のない小路に身をひそめる。
さて、さっきので振り切れたのか、あるいはまだ追ってきているのか……
自分の気配を極限まで殺して観察に徹する。鬼が出るか蛇が出るか、あるいは何も出ないか―――。
しばらく息をひそめていると、修験者らしき人影が見える。が、残念ながら気配までは隠しきれていない、あれは間違いなく人外の気配だ。大方、京都の妖怪の誰かが変化しているんだろう。ここで処理するのは簡単だけど、監視が妖怪全体での組織ぐるみのものなのか、あれの独断なのか……それによって「処理」するかどうかが決まってくる。組織ぐるみだとすれば、処理自体が藪蛇になるかもしれないし。
人影はこちらに気がついているのかいないのか、小路を覗き込む。ひやっとしたけれど、すぐにその顔は引っ込んだ。
どうやら撒けたらしい。一応、少し時間を潰してからここを出ようかな。
そう思ったところで、突如後ろから手を掴まれる…しまった、まさか罠……!
「―――何をしているんだ、君は」
―――――――曹操?来るのが早くないかな?
「何って……曹操に言われたとおり、先に京都に来て露払いしてるんだけど?」
そういうと、曹操の眉間に皺が刻まれる。ずいっと不機嫌な顔が近づいてくる。
あの〜曹操、顔、近い……息、かかりそう………
「俺はそんなことを言った覚えはないが」
「え?ゲオルク経由で伝えられたんだけど……え?」
訳が分からない。
曹操の命令だとゲオルクが言うからわざわざ先に来て、京都入りしたのだ。
だが、命令を出したはずの曹操本人はそんな命令など出していないという。
これはどういうことだろうか。思ったのは一瞬で、自分の英雄派内での待遇を鑑みればすぐに答えが出た。
要するに、邪魔な私を少しでも曹操の傍から引き離しておこうと構成員たちが企んだのだろう。それにゲオルクが乗った、ただそれだけの事。特に表立って何の功績も上げているわけでもない私が曹操の傍に置いてもらえているのは、曹操が私を気に入っているだけだというのが英雄派内でのもっぱらの評判だ。そういう人たちの中では曹操は一時の気の迷いで私を気に入っているだけなのだという説が流布されていることも知っている。違うと知っているのは英雄派内では少数派の、私が以前戦闘技術
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