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第1話 偽レーニン・イン・フレイム
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るレーニンは自身の神格化には最期まで否定的だった。


「いやだから俺は神じゃないってば! 拝まないでよ……え、うん、そうそう! 共産主義だから神様はだめなんだよ! 絶対理性がなんとかかんとか?」


 そのレーニンの遺体が防腐処理を施され安置されているのがレーニン廟である。ガラスケースの中には綺麗な遺体が横たわり、一目拝もうと訪れる人は後を絶たない。いわば、巡礼地だった。


 レーニン廟の焼失は、異教徒がカーバ神殿を焼き討ちしたようなものだ。長命種の多いソ連ではレーニンと共に生きた人物は健在だし、若者にとっても身近な伝説である。ある意味、神以上の影響力を持っているといってよい。
 ソ連に与える衝撃は計り知れないだろう。


 レニングラード全体に戒厳令が敷かれているため、レーニン廟焼失に市民は気づいていないが、いずれバレるだろう。バレたとき、ソ連民はどうするか。怒り狂うことは間違いないが、どう行動するかが読めなかった。


「軍事パレード?」

「レーニン廟焼失を伝えた後、モスコーで軍事パレードを開く」

「同志書記長殿、そんなお遊びをしている場合ではないと思いますが」

「必要なことだ。軍の力を人民にみせねばならん。このままでは血気はやった連中が独自に国境を越えかねん。無策で突撃すれば死者がでる。王国のクズどもがどうなろうとかまわんが、一時の狂乱で失っていいほど人民の命は軽くはない。軍の士気向上の意味もある。だろう、トゥハフ?」

「ああ、だからこその軍事パレードだ。軍が健在であることを示さねばならない。軍が王国に報いを与えることができると信じ切れなければ、愛国心から暴走し多くの人民が犠牲になろう」

「あはは、そうなれば我々もただではすまないでしょうねえ。ここで弱腰とみられれば歴史上初めての革命が起きかねないわあ。でも、情報の秘匿はもう限界ですよお。明日にでもレーニン廟のことを発表したほうがよいでしょうねえ」


 王国への報復は既定路線だ。問題は人民の怒りをどうコントロールするかだ。下手に暴発させれば、敵に利するだけである。史実ソ連と違って、人命を重視する姿勢は、レーニンの日本人気質を受け継いでいた。
 この日、夜遅くまで会議が続けられた。


 翌日、政府からの重大発表によりソ連全土は怒りに満ち溢れた。


 ――――アルメイラ王国討つべし


 歴史が転換点を迎えた瞬間である。
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