銀河帝国、ホルスト・ジンツァー大佐
捕虜交換式
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自由惑星同盟の代表、ヤン・ウェンリー提督。
捕虜交換式の後に僕を含め、数多の随行員が噂の魔術師に群がった。
当然、だよね。
エル・ファシル星系から、輸送船主体にも関わらず、多数の民間人を乗せて脱出。
アスターテ星域会戦は膠着状態に持ち込み、イゼルローン要塞を奪取。
アムリッツァ星域でも最後まで戦場に残り、残存艦隊を帰還させた英雄なんだ。
とてもじゃないけど、割り込む隙なんて、ありゃしない。
僕は途方に暮れて、立ち竦むしかなかったんだけど。
銀河帝国の代表、ジークフリード・キルヒアイス上級大将が動いた。
光り輝く紅玉の様に赤い髪、見事な碧玉の様に煌く青い瞳、190cmの長身。
分厚い包囲網より数段、高い位置にある頭を巡らせた僕の上司は瞬時に状況を把握。
温和な声で詫びると自然に道が拓け、傍に来てくれたんだけど。
密やかな敵意を込めた無音の集中砲火、突き刺す様に鋭い視線が痛い。
通称《赤毛の、のっぽさん》は、女性陣の熱い視線に無頓着。
遠隔攻撃の嵐に全然、気付いてないみたいだ。
「打ち合わせ通り、例の物は準備できているな?」
赤毛の驍将は慌てて頷いた僕の腕を掴み、魔術師を囲む障壁も見事に突破。
人垣に穏やかな声を掛け、道を譲った皆に謝意を述べながら僕を最前列に押し出てくれた。
「初めまして、ヤン・ウェンリー閣下。
お会い出来て、大変、光栄です。
提督は嘗て戦史研究科に籍を置き、歴史学者の道を望んでおられたと聞き及びます。
マイクロ・テープに興味の対象と思われる論文、書籍を収めて参りました。
御覧頂ければ、幸いであります」
「それは嬉しいですね、御心遣いに感謝致します。
素晴らしい贈り物です、本当に有難いですよ」
ヤン提督から数日後、手紙が届いた。
「先日の贈り物、大変、興味深く読ませていただきました。
お返しに送りたい品がありますので、フェザーンまで御足労を願えませんか?」
上司の了解を得て、休暇を取った僕は。
フェザーンに着いて、驚いた。
ヤン・ウェンリー、本人が現れたんだけど。
僕の背後からも、聞き覚えのある声が響いた。
「私は名乗る程の者ではありませんが、貴方と再会の機会を賜り大変嬉しいです。
彼は私の信頼する優秀な幕僚です、報告書の内容も単なる夢物語の類とは思えません。
どうも陸の上は落ち着きませんので、貴方の船に御邪魔させていただけませんか?
それとも、私の船に御招待する方が宜しいでしょうか」
「私は友人の船に運んで貰ったので、美味しい紅茶を出す事も出来ません。
肩が凝る惑星の重力圏を離れ、貴方の船に御邪魔させて
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