八 火蓋を切れ
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巨石の前に静かにたゆたう水面。
目的地であるその場に、四人と一匹は降り立った。
ここから先は戦闘になる可能性が大きいので、カカシは案内役の忍犬にお礼を言って、【口寄せの術】を解く。
素直に従ったパックンが煙と共に掻き消えていく。
立ち上る白煙の傍ら、カカシはちらりと横目でナルの様子を窺った。
九尾のチャクラが滲み出ている彼女に、無理もない、と彼は内心苦笑する。
『尾獣を抜かれた人柱力は死ぬ』
共に行動している砂隠れの里のチヨからもたらされた事実は、同じ人柱力である波風ナルにとっては衝撃的なものだった。
特に我愛羅に親近感を抱いているナルには酷だろう。
おかげでチヨからその話を聞いてから、ナルの必死さは顕著だった。咎めるいのの忠告も耳に入らないのか、走る速度は増すばかり。
長い艶やかな金の髪は聊か逆立っているように波打ち、頬の三本髭は濃くなっている。
普段は澄んだ空の色である眼の青も、昂ったナルの気持ちに呼応しているのか、赤く燃えていた。
頭に血が上っている風情を感じ取り、(頼むから暴走してくれるなよ)とナルの中にいる存在を気がかりに思いつつ、カカシは改めて目の前にそびえる巨大な岩を見上げる。
この岩の向こう側に『暁』と、そして攫われた我愛羅がいるようだが、現段階では中を窺えない。
岩の中央に貼られた『禁』の札が妙に気にかかる。
思案顔を浮かべるカカシに反して、ナルが勢いよく岩に向かって拳を突き出した。
止める間もなく、殴りかかる。
しかしながら彼女の拳は、岩の前の視えない障壁に阻まれた。
「結界か……っ」
自分達が佇む水面と同じく、岩は波紋を描いて、ナルの行く手を阻む。
何らかの特殊な結界が張られている、とその場の面々は即座に悟った。
「さて…どうしたものか」
目と鼻の先にいるのに、手が出せない。岩のすぐ向こうに、目的の我愛羅と、そして『暁』がいるはずなのに、それを阻む巨大な岩と結界に、気を揉む。
苛立つナルの隣で、カカシは片眼を鋭く眇めた。
「外が…騒がしくなってきたな」
岩向こうの変化に逸早く気づいたサソリが、ぴしゃりと尾で地面を叩く。
サソリの言葉に、デイダラも同意を返した。
「ご到着のようだな、うん」
外の異変を感じ取ったデイダラとサソリが岩を透かし見るように眼を細めるのと、洞窟の奥から朗とした声が響いたのは、ほぼ同時だった。
「だが、もう遅い」
三時間ぶりに姿を見せたナルトへ、サソリとデイダラはすぐさま顔を向ける。その腕に抱えられた我愛羅と、そして寸前の彼の一言を顧みて、彼らは即座
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