第五章
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「そうしたのよ」
「そういうことだね」
「そのことがわかったわ」
「謎は全部解けたね」
「ええ、まさか妖怪の仕業だったなんて」
絵梨花は恭一に意外といった顔で述べた。
「思わなかったわ」
「僕もだよ」
「そうよね、けれどね」
「謎は解けたから」
「お家に帰りましょう」
「そうだね、僕もね」
「恭一君のお家って確か」
「生野の方だよ」
そちらだとだ、恭一は絵梨花に答えた。
「そっちだよ」
「鶴橋の近くよね」
「そうなんだ」
「じゃあここから近いわね」
「まあ地下鉄使えばね」
大阪の市営地下鉄だ、大阪市の地下を隅から隅まで走っている。大阪市民の足を助けている重要な鉄道だ。
「すぐだよ」
「じゃあここまで付き合ってくれたから」
絵梨花は恭一の返事を聞いてにこりと笑ってこう言った。
「だからね」
「だからっていうと」
「ちょっと今からお礼させてくれない?」
「お礼?」
「お礼っていってもささやかだけれど」
絵梨花は恭一に笑顔のまま話していった。
「コンビニでコーヒー一本おごらせて」
「こんかい付き合ってくれたお礼に」
「コーヒーでなくても飲みもの好きなのね」
「一本だね」
「おごらせてくれる?」
こう恭一に言うのだった。
「そうさせてくれない?」
「別にいいよ、僕も興味持って一緒に来たんだし」
「そう言わないで、こっちも有り難く思ってるから」
それでというのだ。
「ここはね」
「一本を」
「おごらせて」
「そこまで言うなら」
「ええ、ここの近くにもあるから」
コンビニ、それがというのだ。
「そこに行きましょう」
「それからだね」
「お家に帰ってね」
「うん、ただここはどうもね」
恭一はここでも周りを見回した、彼にとっては同じ様な寺ばかりで本当に何処にいるのかわからなくなる場所だ。
「土地勘が」
「じゃあ駅までも案内するから」
「地下鉄のだね」
「それもさせてもらうから」
「お礼で?」
「こっちは素直な親切でいいかしら」
「ああ、そっちでなんだ」
「ええ、案内するからね」
「それじゃあね」
恭一もこで笑顔になった、そうしてだった。
二人でまずはコンビニに向かった、その時の二人の影はもう夕方になっていたので長いものになっていた。
火吹消し婆 完
2018・1・29
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