第22話『神話の時を超えて〜対峙した魔王と勇者』
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出す。
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しかし一人、歩みを止めるものがいた。ザイアンだった。真っ先に気付いたティッタは後ろを振り向いた。
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「だ……ダメだ!オレは行けない!」
「ザ……ザイアン様?」
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突如として呼びかけるザイアンの声。その震える言葉の心意をうかがい知るものはいない。
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「――――先に行くぞ」
「……すまない」
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どういう風の吹き回しか、シーグフリードはそう告げてノアに案内を促した。
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こういう時、凱と付き合うと面倒くさいことこの上ない。
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とことん情に訴える。情を持ち掛けて相手の感情をくみ取る。反吐が出そうなほどのきれいごとを語るなど、現実肯定主義たるシーグフリードにとって雑音以外の何物でもなかった。
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残った凱とティッタは、地面に膝をついたままのザイアンの姿を見つめていた。
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――何も語らない時間が、無意味に過ぎていく。
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つくづく自分勝手で、矮小で、身勝手な人間だと、ザイアン自身は思いこむ。
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ユナヴィールの村で凱達と勝手に別れ、助けられた矢先に今度は会いたくない。結局自分は何がしたかったのか?
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そしてザイアンはすぐに心の内を白露する。
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「オレの言葉は……父上に届かなかった!アルサスに報いるために――何かできることはないかと思って……けれど、結局オレには何もできなかった!」
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気が付けば、涙をぽろぽろと流していた。
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アルサス――本当なら、君一人の為だけに報いると言いたかった。
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でも、それは言えない。
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自分には『ティッタ』と呼ぶ資格がない故の戒め。せめてあの子の為にできることはないかと悩み苦しんだ。
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言葉で心に訴えても、銃を突き付けて武力に物を言わせても、あの人は――父上は全く怯みもしなかった。
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どうやらこれが自分自身の能力の限界らしい。17という年齢の割には浅はかな考えだったと――自分への侮蔑と情けなさがぐるぐる回る。
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無力。
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それ以外の言葉が見つからない。
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「もう父上は――次に会うときには、銃の引き金を引くことをためらったりしないだろうな……オレの命なんて……父上にとって」
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自嘲気味につぶやくザイアンに対して叱責する声が飛び込んでくる。
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「子供を心配しない親が何処にいるんですか!?」
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自分より年下の少女が、年上の自分を気倒する勢いで言い詰める。
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失意に沈むザイアンの肩に手を乗せた凱は、過去に想いを馳せながら覚えている限りのことを語り始めた。
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「ザイアン……君の言うことが本当なら、今頃君は命を落としていたはず。けれど、こうしてまだ生きているじゃないか
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