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天体の観測者 - 凍結 -
High School D×D
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せざるを得なかった。
 母はもう助からないのだと。
 此度の襲撃は堕天使と人間の血を引くハーフである自分が原因であることを。

 だがこれは余りにも理不尽だ。
 母と自分が何をしたというのだ。

 許せなかった。
 下手人達の存在そのものも、何も出来ない不甲斐ない自分自身にも。


助けて……


誰でも良いから……


母を、愛する母を助けてください


もし神がいるのなら母を……


「ふん、愚かな。"汚れた血"を庇い、死に絶えたか」
「……!」
「何だ、その目は。だが、案ずることはない。貴様も直ぐに母の下へ送ってやる」


 私はどうなっても構わないから、"母"を助けてください……!


 遂に下手人の男が刀を振り下ろし、朱乃の命を刈り取ろうとした刹那──







 突如、眩いまでの極光がその場に迸った。

『……!?』

 瞬く間に黄金の輝きがドーム状に広がり、下手人達を吹き飛ばす。
 その光は神社を包み込み、日本全土に及ぶ。
 惑星を、世界そのものを震撼させ、極光は天へと立ち昇った。
 視認できる程のエネルギー、否、対面するだけで理解せざるを得ない生物としての圧倒的な差。
 
 膨大な光の本流が集束し、人の形を創り出す。
 浮かび上がるは首元にリングを下げ、珍妙な杖を持つ長身の男性のシルエット

 冷や汗を流し、此方を睨み付ける下手人達とは対照的に朱乃は終始冷静であった。
 何時しか身体の震えは止まり、万能感にも似た絶対的な安心感を感じていたのだから。

 やがて極光の中から一人の男性が現れる。
 髪は黒、瞳の色は真紅

 その佇まいは洗練され、今なお光の粒子をその身から放出している。
 彼は宙に浮遊し、周囲を見渡していた。 
 
 だがそんなことは朱乃には関係なかった。
 母を、愛する母をただ助けて欲しかった。

「お願いします……!母を、母を助けてください……!」

「私はどうなっても構いませんから母を、母を助けてください……!」

 涙を流し、朱乃は頭を必死に下げる。
 既に母は事切れている。

 先程から母は死人のようにピクリとも動かない。
 出血は止まり、地面を壮大に紅く染め上げているのだ。
 これで生きている方が奇跡だ。

「どうか……!母を……!」

 朱乃の魂の懇願に対して目の前の男性は微笑みながら、その手に有する杖を回転させた。
 奇抜な装飾が施された杖に取り付けられた球体が淡く発光する。
 
 そしてその杖を母である朱璃に振りかざした。
 

 
 
 
 
 
 途端、母の身体を光が包み込む。
 
 光は瞬く間に消え、その姿を虚空へと消失させる。
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