アージェント 〜時の凍りし世界〜
第三章 《氷獄に彷徨う咎人》
白き地獄の底で@
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アージェントの首都、ゼスタの近郊には、地元の人ですら滅多に立ち入らない深い峡谷がある。千年前に白皇が、アージェントの統一を懸けた決戦を行った際に出来た場所と伝えられている。
峡谷の底には当時のデバイス等が万年雪の中で眠っており、一攫千金を狙うトレジャーハンター等が時たま訪れている。
その峡谷に今、足を踏み入れる一人の青年がいた。暁人だ。バリアジャケットを展開し、ハボクックを携えた暁人は、峡谷の奥へ奥へと進んでいき、その中程で歩みを止めた。
「……問題は無いようだな。」
周囲の雪を一瞥してそう呟く。彼にとって雪は味方だ。雪は彼の姿を隠し、思惑を隠し、痕跡を隠す。そしてーーー彼にとって雪は武器でもあった。
「……《創主暁人と、魔導器ハボクックの名において命じる》」
暁人の足下から魔法陣が展開する。雪の上を広がるそれは、雪原の上に幾つもの光球を浮かび上がらせた。
「……《出陣》」
白き雪の中から、無数の巨像が立ち上がった。
アースラに“その報せ”が届いたのは、それから直ぐの事だった。
「く、クロノ提督!ゼスタ市街地に向け、大規模な軍勢の侵攻を確認しました!!」
「軍勢?何の冗談だ!?」
「わ、分かりません!そうとしか言い様が……」
モニターにはゼスタ上空に配置した偵察用ドローンからの映像が映し出されている。そこには、市街地の手前で停止した100は下らないであろう氷の彫像の群れが存在した。巨人、鳥、獣………姿形は様々だが、唯一共通するのはその全てが、まるで生きているかの様に動いている事であった。
さらに、それらの足下には無数の……
「……雪ダルマ?」
無数の雪ダルマが右往左往していた。そして、中心に立つ一際巨大な氷の巨人。その背中に、見覚えのある人影があった。
『……自己紹介といこうか。白峰暁人、ロストロギア強奪事件の犯人、と言えば分かりやすいか?』
巨人の背に乗る人影は暁人のものであった。拡声魔法を使い、ゼスタ中に声が届く様に話している。その姿はさながら、氷の軍団を率いる将軍だ。
『単刀直入に告げる。最後のスノウスフィアを引き渡せ。この要求が受け入れられない場合、ゼスタを跡形も無く破壊する。』
暁人の要求に、ブリッジが騒然となる。今まで暁人は一般人を巻き込む様な手法を取らなかっただけに、こうまで真っ向からの脅迫は想定していなかったのだ。暁人は別に無関係の人間を巻き込む事に躊躇していた訳では無い。ただ、最大の効果を得る為に今まで温存していただけなのだ。
『……30分待つ、賢明な判断を期待する。』
既にゼスタ中がパニックに陥っており、アージェント政庁は混乱、対策を管理局に丸投げす
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