§39 天地の覇者と幽世の隠者
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それに大して反論しなかったことに。つまりは己が魔王である、と認めたということを。
「さて。ここらでいいかね」
羅濠教主と草薙護堂が激戦を繰り広げた(と思われる)跡地へ来てから教主に確認をとる。自らの家の残骸を敢えて目に入れないように家の手前で後ろを振り向く。神妙な顔をした教主が黎斗の瞳に映った。
「私はどこでも」
「では、行きますか」
黎斗が言葉を発すると、場の空気が突如冷え込んだ。
「ずっと、ずうっと。お会いしたかった」
言葉だけ聞くならば「あれ、いつフラグを立てたっけ?」と言いたくなるような台詞だ。
「お義兄様は遥かな昔より私の目標でした」
ただし
「今こそ」
それは
「私は」
圧倒的な
「お義兄様を超えてみせます」
殺気を除けば!!
「え? え?」
「把ァ!!」
数十メートルはあったであろう彼我距離は一瞬にして零となり、繰り出される拳は神速を軽々と凌駕する。
「ッ!?」
回避と同時に黎斗は悟る。
――途方もなく、強い
黎斗自身も徒手空拳で戦うことは多々あったが、こんなの楽々とは放てない。自分の中で上手く放てた一撃で、ようやく互角になれるかどうか。
「クッ・・・!!」
教主の止むことのない連撃を凌ぐ防戦一方。囮に最低限の注意を払い、立ち位置、地形、体勢をしっかり把握し、必殺となりうる一撃を確実に捌く。姿勢をわざと崩し、揺さぶり。回避。側転、バク転。時折バク転や酔っ払いのふらつきのような、無駄な動きで混乱させようと試みるも、それに動じる気配は無い。
「甘い!」
声と同時に重心に仕掛けられる足払い、次いで繰り出される掌底をすれすれで躱し距離をとる。
「はぁ……」
その光景を眺める陸鷹化は驚くことにも疲れてきた。自分の右腕を奪った彼が途方も無く強いことは予想していたけれど、まさかここまでだとは。
「おいおいマジかよ。あの兄さん、師父の攻撃受けきってるよ……」
あの羅濠教主が最初から本気で挑んでいることにも驚きだが、それを防ぎ続ける彼は一体何者なのだろう? カンピオーネである、の一言で済ませるにはあまりにもひどすぎる。
「ひっどい御方に挑んでたんだな……」
絶望とともに吐いた溜息。魔王の師を持つからか、彼の言葉にはとてつもない重みが確かにあった。
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