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魔王の友を持つ魔王
§39 天地の覇者と幽世の隠者
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から雲行きが怪しくなった。きっかけは黎斗の「今まで何してたの?」という些細な一言。ここからのべ数時間に渡って羅濠教主のノンストップトーク大会が始まった。口出しをするのは当然、黎斗のみ。他の人間は沈黙維持だ。口を開こうものなら「義兄妹の逢瀬を邪魔するのではありません!!」と死が待っているのだから当然と言える。

(か、帰りたい……)

 口を挟めず、割とどうでもよい話を聞かされ、寝ることも許されず、正座で緊張状態の中にいる聴衆たちはただ切実にそれを願う。魔王同士の遭遇なのに戦闘がおこる気配が無いのは喜ばしいが、この状況はこの状況で、正直なかなかしんどい。そんな割と切実な馨の願いは最悪な形で叶えられた。

「それで、羅濠はわざわざ会いに来てくれたんだ?」

 黎斗の一言が場の空気を一気に氷点下へと誘う。その言葉で教主は本来の目的を思い出す。

「……そうでした。この私としたことが、すっかり本来の用事を忘れてしまうとは」

 さっきまでの愛くるしい猫モードから凛々しい獅子のような表情へ。

「……あら?」

 何かマズったかしら、などと口にする間もなく。

「この羅濠、本日はお義兄様に挑むために参りました」

「挑む……?」

 この子は何を言い出すのだろうか。殺し合いを知り合いとする気はないのだけれど。

「お義兄様を倒してこそ武の至尊。私を上回るであろう存在はお義兄様のみです。愚妹の願い、聞いてはいただけないでしょうか?」

 なんだ、力試しか、などと黎斗はあっさり納得する。殺し合いでなく腕試しならば別に何回やろうが構わない。

「んー、いーよー?」

「ちょ、マスター!?」

 泡を食ったエルが黎斗に詰め寄ろうとするのだが。

「ん? 別に腕試しくらいいんでない?」

 黎斗の能天気っぷりに呆れてしまう。いくら腕試しとはいえ、周囲に与える被害は計り知れないものになることを己が主は忘れているのだろうか。

「……まぁ、さ」

 暗い空気を纏って黎斗が続ける。

「家をめちゃくちゃにしたお灸くらいは据えても良いんだよね?」

 これはダメだ。エルの直感は絶望しか感じ取れなかった。

「んじゃあ甘粕さん、沙耶宮さん、立会人お願いします」

「……」

「……魔王陛下の御心のままに」

 正史編纂委員会に拒否権などあろうはずもない。もっとも今まで謎に包まれてきた黎斗の戦闘を直接見ることが出来る、というメリットは大きい上に戦場は既に荒地になっているので反対意見を出す気など毛頭ないのだが。それを口に出すことはない。

「じゃあ行こうか。外でいいよね」

 教主の前を先導し、荒地へ向かって進んでいく。歩く黎斗は気付かない。馨が「魔王陛下」と呼んだのは黎斗であり、
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