第二章
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「先生が要求される報酬は多いので」
「老後や学費や生活費よりも」
「先生の生活質素ですし」
ロートは贅沢には興味がない。
「薬を調合するにも材料は」
「そう、私自身が持っているものもあるが」
「それでもですよね」
「私が受け取っている報酬からすればだな」
「はい、ちょっとですよ」
まさにというのだ。
「ほんの些細な額で。報酬の殆どは残りますが」
「その報酬の殆どを何に使っているか」
「気になったんですが」
「だから答える必要はあるのかい?」
ロートから弟子に聞き返した、逆に。
「私が」
「そう言われますと」
「犯罪捜査でもないね」
「ただ気になったので聞いているだけです」
「なら答える義務はないね」
「そうなりますね」
弟子もそのことを認めた。
「それは」
「ではね」
「答えてくれませんか」
「そうさせてもらうよ」
こう弟子に言った。
「今はね」
「そうですか」
「うん、ではね」
ロートはさらに言った。
「これからまた依頼が来ているから」
「薬の調合をですね」
「するよ」
「ではお手伝いをさせてもらいます」
弟子としてこう答えてだ、彼はロートへの質問のことは忘れてそちらの手伝いをした。ロートは報酬の使い途を言わなかった。
しかし大阪のある孤児院にだ、当然に何億もの寄付があった。それで孤児院の理事長さんは驚いて事務の人に聞いた。
「五億もかい?」
「はい、うちの孤児院にです」
事務の人は理事長さんに答えた。
「寄付で」
「五億もかい」
「きています」
「驚いたよ、それだけあれば」
「借金を返せますし」
「孤児院の運営もね」
「困らないです」
事務の人も言う。
「本当に」
「全くだよ、神様みたいに優しい人がね」
「寄付をしてましたね」
「そうとしか思えないよ」
「一体誰でしょうか」
事務の人は差出人不明のその寄付の主について考えた。
「五億もポンと寄付してくれるなんて」
「うん、だから神様みたいな人とね」
「理事長さんも言われたんですね」
「そうだよ、そして誰かわからないけれど」
それでもとだ、理事長さんはさらに言った。
「その神様みたいな人にね」
「孤児院は救われましたね」
「孤児院にいる子供達もね」
そうなったとだ、理事長さんは寄付をしてくれた人に心から感謝して言った。この寄付のことは大阪でも有名になった。
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