第一章
[2]次話
天才薬剤師
生野ロートはまだ大学院生だが天才薬剤師として知られている、どんな妙薬も瞬時に調合して患者に出すことが出来る。
だがその報酬は法外でだ、薬を作ってもらった大阪のあるお金持ちはロートに苦笑いでこうしたことを言った。
「君はいつもいい薬を作ってくれるけれど」
「報酬はですね」
「高いね、しかも法外に」
このことを言うのだった。
「いつも思うけれど」
「お金は大事なので」
ロートはその整った顔で冷静に答えた。
「ですから」
「それでなんだ」
「報酬はです」
「いつも法外なんだね」
「男女問わず」
性差別はしない、ロートも大阪二十六戦士の一人だからだ。
「そうしています、しかし」
「しかし?」
「常に払えるだけの額ですね」
ロートは自分で言った、自分が要求するその額のことを。
「そうですね」
「それはね」
金持ちも否定せずに答えた。
「そうだね」
「はい、払えないだけの額はです」
「要求しないね、君は」
「私はお金は大事ですが」
それでもと言うのだった。
「守銭奴でも意地悪でもないつもりです」
「だからなんだ」
「はい、報酬はです」
「あくまで、だね」
「払えるだけのものを」
それだけをというのだ。
「要求する様にしていてです」
「払っているんだね」
「そうしています」
「そうなんだね」
「それが人の、戦士の筋と思いますが」
「大阪二十六戦士の」
「私もその一人です、ですから」
「そこは守っているんだね」
法外な額の報酬を要求しても相手が払えるだけの額にしているということはだ。金持ちもこのことを言った。
「そうなんだね」
「左様です」
「そういうことだね」
「ではまた」
「うん、何かあった時は頼むよ」
金持ちはロートに報酬を支払い彼の前を後にした、ロートはとかく金には五月蠅い大阪二十六戦士の中では異色の存在だった。
しかしまだ高校生に弟子にだ、金の使い途のことを聞かれるとこう答えたのだった。
「言う必要があるのかい?」
「貯金されていますか?」
「まあね」
否定はしていない返事だった。
「それはね」
「そうですか」
「老後のことは考えているよ、あと学費も生活費もね」
「報酬からですね」
「出しているよ」
「それでもですよね」
考えつつだ、弟子は師匠であるロートにさらに問うた。
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