番外編 逸見エリカ
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いと思っている。
「エリカ。そろそろ試合が始まるぞ。皆も集まっている」
「わかりました隊長」
「私は隊長じゃない。このチームの隊長はお前だエリカ」
戦車道全日本代表監督のまほさんは呆れながら私に呟く。これからドイツが相手だというのに随分と懐かしい記憶と自分にとって甘い頃の過去を思い出すとは昔の自分には考えられない事だ。少なくともこんな大舞台の試合が黒森峰の時代の自分なら緊張しすぎて醜態を周りにさらしていたに違いない。私もあれから随分と変わった事もあれば変わらない部分もある。
「まほさん」
「どうしたエリカ?」
「今回の代表監督の任を受けてくれて本当にありがとうございました」
「どうしたんだいきなり?」
「いえ、ただ何となく」
本来なら全日本代表監督にまほさんが選ばれる事はなかった。当たり前だが高校で好成績を収めても既に現役選手として引退しており年齢も二十代後半の小娘である。そんな彼女が代表監督になったのは私の我儘だ。私が代表の隊長に選ばれた時にどうしてもと代表監督にまほさんを指名した。周りは反対したが、スーパースターとして注目されていた効果なのか知らないが、すんなりと意見は通った。今回の代表監督にまほさんが指名された時は高校生大会を最後に公式戦にも参加せずに、アマチュア試合の監督経験しかない事から実力に疑問視されていたが、決勝戦まで駒を進めた事で評価は急上昇した。
元々まほさんは綺麗だから若くて美しい女性監督として、現在は世間で人気者になっている。最初はあれだけ叩いておいて決勝戦まで来たら直ぐに手のひらを反すとはと世間の反応に私は若干だが呆れていた。
「本当に変わったなエリカ」
「あまり自覚はありませんけどね」
実際にそうだ。私は未だに自分が一番だと思っていない。世間で私をスーパースターと言っているが超えるべき壁を私はまだ超えていない。私はまだあの太陽を超えていない。西住みほという太陽の位置に私は到達していない。
「さあ時間だ。U-22で島田流の島田 愛里寿が優勝したそうだ。私達も負けるわけにはいかないぞ」
「当然です。私達が目指すのは優勝だけです」
「ふ、そうだな。いくぞ」
「はい」
「私の存在も忘れないでください。私は副隊長ですよ」
「あら居たのノンナ?」
「気がつかない程に老いましたかエリカ?」
「お前達。これから決勝戦が始まるんだぞ。いつもの事だが、頼むから少しは自重してくれ」
「「監督のお願いでも、これだけは無理です」」
みほ、見ていてね。もう貴女は亡くなってしまったけど、それでも私は絶対に貴女を忘れはしないわ。だから、私の戦車道が何処までいくのかわからないけど、最後まで見続けてね。
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