0290話『陽炎型の最後の方』
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「提督。狭霧をここまで育ててくれてありがとうございます。また練度を上げるようでしたらお声をかけてくださいね」
「わかった。その時はまたよろしくな狭霧」
「はい。それでは天霧が待っていますので失礼しますね」
そんな感じで狭霧は笑みを浮かべながら執務室を後にしていった。
これで狭霧が練度が70に達したのでこれであと残りの練度70以下の駆逐艦は二隻目を含まなければ谷風(52)、沖波(45)、早霜(42)の三人となった。
特に沖波と早霜は栗田艦隊に所属していたからおそらく出番はあるだろうから早めに育てておこうとは思っているけど、まだ限定作戦の開始日は二月の中旬ときたからゆっくりと育てて行っても十分に間に合うくらいの余裕はある。
むしろ、まだ余裕があるのなら二人目の秋月(46)と初月(45)も小沢艦隊の予備として練度を70まで上げておいても損はないと思うくらいには猶予はある。
なんせ今度の限定作戦は大規模の予定らしいから早々にみんなを使い切ってしまうかもしれない可能性も孕んでいる。
まぁ、そんなに難しく考えないでいいとも思っている。
行けるとこまでは甲か乙で走って無理そうだったら丙に落とせばいい事だしな。
そういうわけで、
「それじゃ今度は谷風。陽炎型では君が最後になってしまったけど張り切って練度を上げていこうとしようか」
「おうともー! かぁーっ! この谷風さんを最後に残しておくとは提督もなかなかこの谷風さんの事を舐めているねー。うりうり♪」
そう言って肘でコツコツと突いてくる谷風は何だろう……やっぱり江戸っ子だよな。
涼風と同じ感じかな?
「あはは。すまないすまない。後でなにか買ってあげるから勘弁してくれ」
「おっ! わるいねー! にしし♪」
そんな感じで今日は谷風をそのまま秘書官に据えてやっていくことになった。
「それにしても……とうとう三人まで減ってきたって事は提督も頑張ったんだなー。これで谷風さん達も一応の練度に達すればいつでも改二の準備はできる段階になるからね」
「その通りだ。最近は最低でも80まで上げないと安心が出来ないから一応全員70まで上げておいて誰かの告知が来たら一気に上げていこうって方針だからな。
そして春先には数隻の陽炎型の第二次改装案が来るって話だから楽しみだよな」
「確かになー。あー……前に長波が改二になって陽炎型のみんなで会議を開いたんだけど陽炎姉がそれはもう悲壮感を漂わせていたからやっと念願叶ったって感じかねぇ?」
そんな事があったのか。陽炎も焦っていたんだろうな……。いまだに陽炎型の誰にも改二が来ない事に。
それで私は谷風のその言い分に「そうだったのか」と返しておいた。
「これで晴れて改二の道も開くってもんさ。誰に来るのか今から楽しみだねぇ」
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