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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン86 百鬼の疾風と虚無の仮面
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付けば唇がカラカラに乾いていたが、それに構う余裕もない。

「訳が分からない、か。そうだろうな。ならば、もう少しわかりやすい話をしよう。君の出した仮定をあまり周りに触れ回られては、こちらとしても少々困るのだよ。知りすぎた、と言ってもいい」
「だから実力行使、というわけか?」
「そう思ってもらって構わない」
「……いいだろう。だがこの俺が、一筋縄で済むと思うなよ!」

 意識的に放った威勢のいい言葉に、久しぶりの帰還とは言え見慣れた部屋の中。だが彼の耳には気合を込めたはずの自分の言葉も虚しく響いて聞こえ、彼の眼には妙に寒々しく弱い光の照明が辛うじて部屋の中を照らしているように映った。

「ええい、始めるぞ!」

 冷たい空気に抵抗するかのように一際大声を出し、自らを鼓舞して向かい合う。ひとりぼっちの戦場で、世界の命運を握るための戦いが始まった。

「「デュエル!」」

「先攻は私が貰おう、このモンスターをセットする。さらにカードを伏せ、ターンエンドだ」

 カードをセットしたのみでターンを渡すミスターT。まるで正体の掴めないそのセットモンスターが、三沢の心を占める絶対にミスや敗北は許されないという焦りによって何倍も大きな脅威に見えさせているのを彼本人も自覚していた。それ故に、彼はその恐怖を乗り越えるためにあえて正面から戦うことを選ぶ。

「なら、俺のターンだ。来い、牛頭鬼!」

 牛頭鬼 攻1700

 三沢の呼びかけに応えフィールドに現れたのは、巨大な木槌を得物とした2足歩行する黒牛の化け物。相方の馬頭と共に地獄の門を守るとされる、由緒正しきジャパニーズ・アンデッドの一角だ。

「牛頭鬼は1ターンに1度デッキから妖怪、つまりアンデット族1体を墓地に送ることができる。このターン俺は、馬頭鬼を選んで墓地に送らせてもらう」
「牛頭と対を成す馬頭か。君の地属性相当のデッキは、ジェムナイトだと記憶していたが」
「その通り、これは地属性のデッキではなく、疾きこと風の如くを貫く風の属性デッキだ。ただしひとこと言っておくが、今から吹き荒れるのはただの風じゃない。百鬼を率いるあやかしの風だ!永続魔法、竜操術を発動!」

 締め切られたはずの部屋に、一陣の風が吹き始める。牛頭鬼の周りを包むように渦巻くその風に乗って飛来した1匹の小型の龍が、自らの体を鍛え上げられた業物、ほのかなピンク色の柄を持つ剛槍として妖怪の手の中に委ねた。

「竜操術は1ターンに1度手札のドラゴン族ドラグニティを1体俺の場のモンスターに装備し、さらにドラグニティが装備されている限りそのモンスターの攻撃力を500ポイントアップさせる効果を持つ。これによりこのターン、このドラグニティ−コルセスカを牛頭鬼へと装備させてもらおう」

 牛頭鬼 攻17
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