ターン86 百鬼の疾風と虚無の仮面
[17/18]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
どうしたんですか、俺相手に」
通話相手……天上院吹雪の非常事態とは思えない第一声に、返す言葉も思わず呆れ声になっているのを自覚する。とはいえ当の本人も本気ではなかったらしく、すぐに真面目な表情と声色に切り替えた。
『鮫島校長から、今コロッセオで発表があったよ。ダークネスの話は知っていたが、まさかこの学園にここまで深く入り込んでいたとはね。正直、今の段階でもここに全校生徒がいるとは思えない。すでに何十人単位で向こうの世界に引き込まれている、そう考えるのが妥当だろう』
「……すみません、俺の判断が遅れたせいで」
何十人単位、という言葉が、三沢の胸に重くのしかかった。計算に間違いがあったのかダークネスに力を貸す第3者が存在するのかは依然わからないままだが、一足早く手を打つためにこうしてアカデミアに戻ってきたのにもかかわらず後手後手に回らざるを得ず、完全に被害を防ぎきることができなかった後悔に包まれる。
『いや、責めているわけじゃない。君がこうして警告してくれたから、まだ無事な生徒もたくさんいるんだ。それよりも君の立てたという作戦だが、その……』
珍しく言いよどむ吹雪に、思わず笑いかける。もっともな反応だ、と思った。俺だってツバインシュタイン博士の下で学んだ次元世界に関する理論や、覇王の異世界で得たこの次元での常識など通用しない様々な知識がなければこんな話、到底信じられるものではなかっただろう。
『確かに、光がある限りその裏側には必ず闇もある。それ故にダークネスは不滅で、消し去ることは不可能だ。そのことは、他ならぬダークネスの力に取り込まれていた僕がよくわかっている。となれば、君の言う作戦は確かに奴に対して数少ない有効な対抗手段となり得るだろう。だが、本当にそんなことが可能なのか?』
本当に、そんなことが可能なのか。それは彼自身、この段階に至るまでの間に何度も自分に問いてきたことだった。だが、いや、だからこそ、彼はその返事をすることに迷わない。そう問われて迷いや躊躇いを生じるような段階は、とうの昔に自分の手で通り過ぎたのだから。
『……いや、すまないね。君のことを信用していないわけじゃないんだが、そうとられてもおかしくない発言だった。必ずこの作戦、成功させよう。僕たちも陰ながら、できる事がないか探ってみるよ』
「はい、お願いします。では」
通話を切り、再び机に向かう。想定外のスピードのせいで多少計算が狂ってしまっているため、その修正を行わなければならない。気が付けば、心の中のもやもやした気分は消えていた。そうだ、俺のやることにはちゃんとした意味がある。これが、この戦いでの俺の役目だ。
このタイミングで電話をしてきたということはもしかしたら、あの人は自分の心が揺らぎそうになっていたことを察知してい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ