ターン86 百鬼の疾風と虚無の仮面
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……火車!」
確率的にはとても低いと言わざるを得ないその可能性に、三沢は賭ける。信じれば、デッキは答えてくれる。
そして火車が、現世に招来した。それは、炎に包まれた車輪と共に彼岸より来たる自我を持つ冥界の車。罪人の死体を冥界の底へと持ち去り、その魂を未来永劫成仏することさえ許さない場所へ連れ去っていくと言われる伝説の妖怪である。獲物を見つけたその目が光り、車の前面にかかっていたすだれがおもむろに開く。その奥に広がっていたのは車の内部ではなく、無限に広がり中には何ひとつ存在しない完全な闇。そしてすだれが完全に上がりきると同時に、闇が見る者すべてを引き寄せる強烈な吸引力を放ち出した。明らかにサイズが違う2体の仮面魔獣の姿がねじれ、歪み、手足を振り回しての抵抗虚しくその車内へと……それどころか無差別悩みは本来味方であるはずの狐トークンですらも吸い込んでしまう。
全ては、ほんの1瞬だった。火車の通った跡には、あれほどたくさんいたはずのモンスターはもはや1体すらも残っていない。ただ1つ、火車のみを残して。
「火車の特殊召喚に成功した時、火車以外の全てのモンスターは持ち主のデッキへと戻される。デス・ガーディウスが遺言の仮面を遺す条件はフィールドから墓地に送られること、よってこの方法ならばその効果も封殺される」
「だが、火車は本来自らのアンデット族とコンボで使うべきカード。もともと攻撃力が不定の火車は自身の効果でデッキに戻したアンデット族の数によってその数値が変動するが、お前が召喚条件として用意したのはデッキに戻ることのできないトークン2体。それでは攻撃力は0としかならないはずだ」
火車 攻?→0
そう、ミスターTの言葉は正しい。トークンはあくまでカードとして存在しない以上、デッキに戻るという現象が起こりうるはずもない。つまり火車が自らの効果でデッキバウンスに成功したのは、実質的には悪魔族である仮面魔獣2体だけでしかないのだ。
だが、三沢の見つけた勝機はそんな浅い言葉では揺らがない。そんなもの、このカードを引いた時にはすでに理解していたのだから。
「わかっているさ。だが俺にはまだ、この墓地のカードがある。墓地の魔法カード、シャッフル・リボーンの効果を発動!俺の場の表側表示のカード1枚をデッキに戻すことで、デッキからカードを1枚ドローする。俺が選ぶのは、このリビングデッドの呼び声だ」
土地鋸を蘇生して以降、ずっと何の効果も持たないカードとして場に留まっていたリビングデッドの呼び声。それをたった1枚のカードのみを求めて新たな手札に変換し……道が、開けた。
「魔法カード、ガルドスの羽根ペンを発動!」
「何?」
ここで初めて、ミスターTの表情が変わる。それは、疑い。目の前の人間が、何を考えているのかわからな
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