番外編 島田千代
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あの時のしほの表情と隠し切れない殺意に私は恐怖を覚えた。そして私は西住流のご老人達は、とんでもない人物を本気で怒らせた事を私は察した。
「私は西住流の時期家元であると同時に『母親』なのよ」
ご老人達はしほを伝統を重んじる自分達に都合のいい人物が家元になると喜んでいただろうがとんでもない。しほが本気で怒った時を私は思い出す。しほが本気で怒った時はどんな人間が相手であろうと相手が精神崩壊寸前まで恐怖を与える。しほが本気で怒った時の戦車道の試合は数える程だが、相手が戦車道の選手としては外道に分類される人物。そういう人間は基本的に相手を怒らせて冷静な思考を奪う事に長けているが、しほの場合は冷静で静かに冷たい殺気を放っていた。試合が終わればしほの圧勝。試合終了後の相手はしほに怯えてまともに目を合わす事も出来ずに、しほがその場を去るまで動くことが出来ない程に恐怖していた。あの時のしほの殺意と表情が現役時代のしほを思い出させるほどであった。
あの凄まじい殺意を纏ったしほを見て私は第六十二回戦車道全国高校生大会以降の西住流の対応にしほが許容できる範囲を西住流のご老人達は超えさせてしまったと理解した。しほは基本的に不愛想なせいで冷たい人物と誤解されがちだが本来はとても情に熱い女性。不愛想で冷徹なイメージが強いのは西住流本家の人間として対応しなければいけないと思いが強く、本人の自分に対して不器用すぎる性格も原因の一つだ。
だが西住流の人間としてではなく、母親として西住流を本気で変えると判断したしほは本当に止まる事はない。私はこの時しほとの話を聞いてしほの思いが本物で本気であることを理解した。
ーーー。
あのしほとの話し合いから五年が経過した。しほの西住流を変える決意を聞いて娘の愛里寿を大学に飛び級させる事を辞めさせた。愛里寿は確かに自他共に認める程に天才だが、しかしよくよく考えればまだ中学生にもなってまもない愛里寿を大学にいれる行為は島田流の人間は優れているというアピールにはなるが、母親として考えれば娘の道を親のエゴで勝手に決めつけているという親として最低な行為をしている事に気がついた。島田流のご老人達のような人間にはならないと決めていたのに、私は知らずのうちにご老人達と同じ道を歩んでいたことにしほと話して気がついた。
あれからしほは、長女のまほさんと一緒に本当に西住流を根本から変えた。あの時の決意は本物であり、本当に実行して影響力の強いご老人達を短期間で排除した。西住流の実戦部隊の大半が保守派に属していたせいで影響力は低下したが、それでも西住流は存続している。確かに影響力は低下して西住流が衰退したように世間では思われているが私は長い目で見れば西住流は島田流を追い抜く可能性が高い組織にまでしほが成長させた事に気がついた。ご老人達は
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