番外編 島田千代
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った。しほにとって西住流が全てといっていい程に信奉していたのに、西住流を根本から変えるという言葉は今までの西住しほからは考えられないからだ。やはり自分の娘が戦車道の試合で事故死した事がそれだけしほにとって衝撃的な事だとこの時わたしはそう思った。だが、しほはそれだけではないと私に呟いた。
「みほを失った悲しみは確かにあるわ。でもね千代。貴女は現在の日本の戦車道に未来があると思っているのかしら」
未来があると言われてしまえばあるとは言えない。日本の戦車道は黎明期より日本の戦車道を支えてきた西住流と島田流の影響力が強い。日本戦車道の基礎を築いたといっても良い程に貢献してきたのは戦車道の歴史を知れば誰もがわかる事実。
しかし、古くから西住流と島田流を支えてきたご老人達は日本戦車道を支えているとは言い難い。ヨーロッパやアメリカでは戦車道のメジャーな競技にするため大規模な改革がちゃくちゃくと進んで安全基準や選手のメンタルケアに力を注いでいる。しかし、昔からの伝統を崩したくない保守派達は武道としてではなくスポーツと定義されつつあるヨーロッパやアメリカの戦車道に嫌悪感が強く、私達より先代は特にヨーロッパやアメリカの戦車道文化を取り入れる事にも嫌悪感を強い。世界選手権があと数年で日本で開催されるというのにご老人達は伝統を蔑ろにする気かと怒りを露わにして一向に改革が進んでいない。このまま戦車道改革を進めなければ日本の戦車道が衰退してしまう事は島田流の時期家元の私は嫌というほど理解している。
「このまま西住流と島田流のご老人達やご老人達の腰巾着の保守派を好きにさせてはいけないのよ」
「言葉にする事は簡単よしほ。でも、ご老人達を簡単にどうにか出来ると思っているのかしら」
ご老人達の戦車道に対する影響力がとても強い事は戦車道連盟と関わりあれば誰もが知る事実。第六十二回戦車道全国高校生大会から戦車道連盟や西住流に対して警察が調査を開始して世間に知れ渡った黒い案件。逮捕された人間の多くは西住流の関係者だったが、島田流も黒い案件に関わったせいで島田流の人間も逮捕された。しかし、それでもやはり保守派の本命は逮捕できないでいた。理由は簡単で明確な証拠がないというのが表向きの理由だが、政治家達の一部がご老人達と事を構えたくないというのが本音。ご老人達は今でこそ現実が見えない老害だが、ご老人達の血縁は無視できない。西住流も島田流を支えているご老人達の血縁者達は西住流と島田流を支えるのに欠かせない存在。その影響力は一部の政治家や経済界の重要人物が事を構えたくないほどだ。そんな強力な血縁者を味方につけているご老人達を排除すれば西住流と島田流の影響力低下は免れない。
「ご老人達を排除すれば西住流に致命的な深手を負うわよ」
「理解しているわ千代……でもね」
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