暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
特別編 ファースト&ネクストジェネレーション
第1章 ヒルフェマン・ビギンズ
前編 古我知剣一の追憶
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に居合わせた甲侍郎は、唯一の生き残りである少年「橘花隼人」に延命のため人体改造を施し、「雲無幾望」という新たな名を与えた。

 一見、人命のために死力を尽くした美しい行為にも見えるだろう。事実、助けられた当人は甲侍郎に深く感謝していた。
 ――だが剣一には、その光景がただただ痛ましかった。

 甲侍郎が彼を秘密裏に保護下に置いたのは、善意によるものではない。いや、善意が全くないと言えば嘘になるが――本質は別のところにあった。

 彼は警視総監の子息に人体改造を施したという罪を問われ、研究に支障を来す事態を回避しようとしていたのだ。
 だから新たな名と居場所を与え、隼人本人を懐柔して事実を闇に葬ったのである。

 確かに彼は、死の淵から少年の命を救った。全ては、着鎧甲冑の研究――ひいては大勢の人命を救うためにある。
 彼の近くで生きてきたからこそ、剣一はその真意を深く理解し――それゆえに、反発もしていた。

 このように人の運命を、自分の物差しで左右するような行いが許されるのか。さも正しいことのように吹聴され、騙されている少年の笑顔を見て、何も思わないのか――。

 そうした「疑い」が膨らむに連れ、剣一は幸せであるはずの今の暮らしを、心から受け入れることが出来ずにいた。孤児である少年達の傍らに、「居場所」を感じてしまうほどに。

「ケンイチ? どしたんだ、さっきから難しいカオして」
「え……あ、い、いや何でもない。毎日重たくってやんなっちゃうなー、ってさ、ははは」
「はは、だろーな。見るからに重そうだ。何日分買い込んでるんだっての」

 いつしか、顔に出ていたらしい。養父への不信が表情に現れていることを指摘され、剣一は焦るあまり紙袋の中身を落としそうになる。
 そんな彼の様子から、疲れているのだろう――と当たりをつけた三人組のリーダーは呆れるように笑いながら、道路の果てを親指で差した。

「呼び止めて悪かったな。さっさと帰れよ、しんどいだろ」
「うん、ありがとう。じゃ、また明日!」

 彼の心遣いに応じ、剣一は笑顔で会釈すると、彼らに背を向けモーテルから離れていく。やがてその姿が見えなくなると――三人組は再び顔を付き合わせ、談笑を再開した。

 すぐそこに――危機が迫っているとも、知らずに。

 ◇

「あれ……お兄ちゃんは?」

 同時刻――とある山中にひっそりと建てられた、救芽井研究所。その一室で暮らす研究者一家の最年少である、十二歳の少女――救芽井樋稟は、台所まで足を運んでいた。

「剣一君なら、街まで買い出しよ」
「あれ? そっか、今日は買い溜めの日か……。もう、おじいちゃんったらいつもおっきなピザやハンバーガーばっかりなんだから」
「ふふふ、剣一君も買い出しに行かされて大変
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