第2話 特別優秀生・佐々波真里
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で、でも……」
お嬢様学校に通っているのであって、お嬢様というわけではない。その後ろめたさから、真里は眼前の用務員が深々と頭を下げていることに順応できずにいた。
(……あれ?)
そんな中。彼女はふと、用務員の人相に気を取られてしまう。
切り揃えられた艶やかな黒髪。切れ目であり、冷たさを感じつつも端正に整った目鼻立ち。仏頂面でありながら、どこか美しさすら覚える顔の造形は、美少年と呼ぶに値するものだった。深く作業帽を被っているせいで、ほとんど隠れてしまっているが。
だが、彼女が気にしていたのは用務員らしからぬ美男子であることではない。彼の顔に、既視感を覚えたからだ。
「あ、あの……」
「はい」
「……どこかで、お会いしたこと、ありますか?」
今一つ自信なさげだが、気になって仕方がなかった。その好奇心ゆえか、彼女はおずおずと用務員に問い掛ける。
だが、彼は何も答えない。ただじっと、真里と視線を交わしていた。
やがてそこへ、歩いて追ってきた恵が合流するが。
「初めまして、佐々波真里さん。聖フロリアヌス女学院へようこそ」
「あっ……! あ、文村琴海生徒会長!? は、初めまして! 佐々波真里です!」
「あら、すでにわたくしをご存知でしたの。光栄ですわ佐々波さん」
それより一足早く。生徒会長の文村琴海が挨拶のために姿を現したのだった。
予期せぬ生徒会長との遭遇に、真里は緊張で固まりながらもなんとか言葉を絞り出す。そんな彼女に聖母のような微笑を送り、琴海は真里を歓迎する旨を伝えた。
周囲は今話題の新入生と、憧れの生徒会長とのツーショットを前に、大きくどよめいている。彼女達のフィルターには、二人の周囲に咲き乱れる百合の花が映っていた。無論、用務員達は林と同化している。
「中流階級からの初の合格者。それも特別成績優秀枠という泊も付いているあなたには、生徒会長として大変期待しておりますのよ。本校の模範としての、華々しい活躍を楽しみにしておりますわ」
「お、恐れ多いです模範なんて! わたしは、ただ医者になりたくて……」
「そうですわ。あなたのお話を伺った時から、そこが気掛かりでしたの。ただ医者になるだけなら、一般の高校からでも目指せるはず。なぜわざわざ、この女学院へ?」
「それは……」
そんな琴海の質問に、真里は僅かに言い淀む。聞いてはならないことだったか、と当たりをつけた琴海は話題を変えようと口を開くが、それより早く。
真里は意を決したように、声を絞る。
「……ただの医者じゃない。どんな怪我も治せる、最高の名医になりたいんです。普通の学校じゃ目指せない、医師の高みへ」
「……なるほど。並々ならぬ決意を感じますわ。そこまで自分を駆り立てる『何か』が、あなた
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