最終話 地獄を感じた、あの日から
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ーツ。その関節各部を、黒と黄色のプロテクターが覆い――首に巻かれた白マフラーが、一際激しく揺れる。
『Awaken!! Firefighter!!』
着鎧シークエンスの終了を告げる電子音声。その宣告を合図に、未知の鎧を纏う少年の躰が跳び上がって行く。
「はァッ!」
彼は短い気勢から放つジャンプでワイヤーをキャッチし、そのまま最初に引っ掛けた階層まで直行して行った。見たことのない着鎧甲冑の登場に、野次馬が沸き立っている。
「ご覧ください! 今、謎の着鎧甲冑がワイヤーで壁を伝い、逃げ遅れたものと思しき被災者の救助に向かっているようです! しかし、火災はかなり多くの階層に広がっている模様! 果たして彼は、被災者を助け出せるのでしょうかッ!?」
「ちょ、玄蕃さんトーン落として! 顔怖い! 超怖いですから!」
さらに報道陣も大勢詰め掛け、最前列の女子アナウンサーは猛り狂うように現場を実況している。その鬼気迫る実況に、カメラマンが慄いていた。
「ごほ、ごほっ! う、うぅ……琴海、琴海ぃ……!」
その時。和士のそばで倒れたままの男性が、うわ言のように娘の名を呟いた。それに気づいた和士はそばに寄り添い、励ますように声を掛ける。
「大丈夫です。大丈夫ですよ。あなたも娘さんも、必ず助かりますから」
「あ……あの娘はきっと、亡くなった妻の形見の、ペンダントを……取りに戻ったのです。あの時、琴海は『お母様のペンダントがない』と泣いていた……」
「ペンダント……ですか」
「確かにあれは、私にとっても大切な宝物です。だが、あの娘の命には換えられない! お願いします! どうか、どうか命だけは……!」
「心配いりません。大丈夫ですよ、絶対に」
和士としては、これといった根拠などない。それでも他に頼れる相手もいない以上、彼は「第三世代型」を持つ少年に賭ける他なかった。
(二次災害を回避するために、他の隊員には下層を捜索させているが――あいつは真っ先に上の階層を目指していた。……俺の采配を汲んだ上で、捜索の穴を睨んだのか)
少年自身の意思で上層を捜索した――となれば、そこで彼に万一のことがあっても、形式上は和士の責任にはならない。彼は和士の部下ではないのだ。
それに、いくら能力があると言っても危険が一際大きい上層の捜索を、他人にさせることは和士の良心が許さなかった。
彼が和士の胸中をそこまで読んだ上で、命令されるまでもなく自己判断で上層に向かったのかは――定かではない。だが少なくとも、今の状況は和士にとっては好機とも言えた。
(今は……あいつを信じるしかない。あいつと、「第三世代型」一号機――「救済の遮炎龍」を)
やがて――少年の背を見
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ