第25話 風の唸りに、血潮が叫ぶ
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うに上昇していった。
だが。もはや彼には、安全に着地できる余力も残されてはいなかった。意識が乱れ、失血により思考もまとまらず、上下左右もはっきりしない。
そんな状況の中でもなお、心の奥底に残された「少女を守る」という大命だけは、褪せることなく彼の行動原理に焼き付いていた。ふらふらと安定しない飛行の中でも、鋼鉄の腕はしっかりと少女の柔肌を抱き締めている。
――そして。
「うっ……ぐ……!」
徐々に高度を失って行く雲無の身体は、岸辺の砂利を削りながら、不時着していく。大地と己を削りながらも、少女の身体だけはしっかりと守り抜いて。
数十メートルに渡る滑走を経て、ようやく止まった時。ほんの僅かな静寂を経て――気力に溢れたエンジン音が、聴覚を刺激する、
『なんてことだ……雲無! 聞こえるか!? 応答してくれ、雲無!』
「ぁ……ぅ、ぁ……」
歪む視界は、曇り空の中を飛ぶ「至高の超飛龍」の姿があった。そして、その鋼鉄の腕の中には――
(麗……よかった)
――それがわかった時。力尽きたように、雲無の両腕が大の字のように広がる。長い保護から解き放たれた少女は、それに気づくと我に返ったように目を見開く。
そして青ざめた顔で、動かなくなった白馬の王子の手を――傷付いた羽根の腕輪ごと、揺さぶるのだった。
「どうしたの……!? どうしちゃったのよ! 起きてよ! ねぇっ!」
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