暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第10話 美女と田舎っぺ
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「……あの時は、本当にありがとうございました。身の程も弁えずに無茶なことをして……その挙句、アカデミーの方にまで多大なご迷惑をお掛けしてしまうなんて」
「い、いやいや。むしろ君が頑張ってくれていたおかげで、俺達も間に合ったんだし。そ、それに助けたのは海原であって、俺は結局何もできなかったし……」
「海原……そうですか、あの人は海原さんと仰るのですね」
「……?」

 そんな彼女は、ふと、和士が凪のことを口にした途端。パアッと表情を綻ばせ、和士の目を丸くさせる。
 今までの大人しそうな振る舞いから一転して、興味津々といった様子を見せる彼女は、興奮を抑えるように胸に掌を当てていた。

「君は、海原を尋ねてここへ?」
「はい……。伊葉さんのことは『元総理の息子がヒーローに』っていう当時のニュースを見て、すぐに知ったのですけど……あの日、あなたと一緒にいらした海原さんのことは、わからないままでしたから……」
(……それで俺を呼び出したのか。まぁ、そうだよな。あの時、命を張って彼女と子供を助けたのは、海原だもんな)

 さらにその頬は、ほんのりと桃色を帯びていた。はにかむようなその表情を目の当たりにして、和士はようやく悟る。
 ――子供ごと自分を窮地から救ってくれた凪に会いたくて、あの時彼と一緒にいた自分を尋ねてきたのだと。

 健全な男子高校生の性として、スタイル抜群の美少女とお近づきになった以上は、「そういうこと」を否応なしに期待してしまう。
 それゆえに、わかりきってはいても目当てが自分ではないという事実に、和士は微かに落胆していた。

「それで……あの……その、今日お尋ねしましたのは、海原さんのことを教えて頂きたくて……」
「そうか……。しかし、悪かったな。あいつは今、特別待遇で救芽井エレクトロニクスまで出向して研修を受けてる。アカデミーには、いないんだ。今日の夜には帰ってくると聞いてるんだが」
「あっ……そ、そうだったのですか。でも……凄い人なんですね、海原さんって! まだ卒業前なのに、プロのヒーローさん達と一緒に仕事してるなんて!」
「そ、そうだな……」

 だが、自覚があれば気を取り直すのも相応に早くなる。和士は愛想笑いを浮かべて凪のことを語る。その口から伝えられた彼の輝かしい活躍を聞いた結友は、見る者を虜にする華やかな笑みを浮かべ、和士の話に聞き入っていた。

 ――だが。和士の胸には、一抹の不安があった。それは、彼女が望むままに凪を紹介していいのか――ということ。
 ヒーローとしての海原凪を否定する気は毛頭ない。人柄も好ましく、能力も申し分ない。

(確かにあいつは、ヒーロー候補としては立派だと思う。申し分ない、と思う。けど、けどなぁ……)

 しかし。それほどの高評価を以ってしても
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