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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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だ。
ゆえに、今生きている人々には、【死に神】が見えはしない。ただし、死んだ人が、浮遊霊になり、有能な霊感を持つ人に伝えれば別だが……。残念なことに、そのような人に会う確率は、限りなくゼロに近いのだ。だけど、こうも言えるのではないだろうか?
【死に神】の存在を知っている人がいる。
だからこそ、彼の容姿等が語り継がれてきた、のだと。

佐藤は、登校時、常に同じ霊を見ることになる。
ところが、彼はそれを結構楽しんでいる節≪ふし≫もあった。それらのできごとは、彼の心の中で大きな比重を占めてはいる。だが、一種の陶酔が、彼を包んでいるのではないだろうか? それが証拠に、斎藤の顔には、なんとなく笑みが浮かんでいるからだ。霊を、何の心理的に葛藤するのでなく、当たり前の如く容認している。
何人かの学生が、彼の様子を見て、
「クス、クス、クス、クス、クス、クス、クス、クス、クス、クス、クス、クス、…」
と、笑っている。その笑みは、受けている恐怖を表現している。つまり、押し殺した笑みで精
神を均衡させているのだ。まるで精神異常者に関わりたくない。そんな態度で、そそくさと、し
かも、中には、ダッシュして離れて行く者もいた。毎度、こうだから、もう今では、彼も気にも
留めなくなっていた。

佐藤は、霊がいる坂を登りきった。そこには、眩しい太陽が燦々≪さんさん≫と降り注いでい
る。その桜並木の道を一直線に進んだ。
毎年入学式の始まる四月上旬には、桜のトンネルが出来る。黒いアスファルトの道路の両端に、
桜の木が等間隔に植えられているからだ。特に、桜の花吹雪が舞う時節には、風情≪ふぜい≫を
感じる。が、今は五月初旬だから、目にも鮮やかな緑の葉が木々を彩っている。その木々の下、
トボトボと肩を落とし歩く。少しだけ、今までに味わった緊張感と恐れから解き放たれる。その
後、彼は胸を張って大学へ向かうのだ。もう霊と遭遇しない、と知っているから…。奇妙である
が、同じ道を帰りに通っても、もうあの二人と、【死に神】には会わない。佐藤は、胸をはってK大に向かった。
校門を入ったすぐ横の礼拝堂を、チラと横目で見て古い経済学部の建物の中に吸い込まれていった。

浅田祐樹は、校門を入ると芝生が太陽を浴びて緑に輝いているのを、レイバンのサングラス越しに見やる。
そこは、まるで牧場のように広々していて、男女を問わず、学生達が、思い思いに寝そべって
いる。その光景は、牧場で寝そべっている牛さながらだ。
牧場の左の道を歩く。経済学部の建物は、歴史あると言えば良い耳触りだが、老朽化し煤と埃が浸み込んでいた。その建物は、すでに茶色に変色しているが、当初は、真っ白な建築物だったらしい。大学の図書館の古い文献にそう書かれている。
祐樹は、薄暗い階段を降りて行き、地下にあ
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