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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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死がもたらす【不安】である。極度にデフォルメされた顔は、まるで、ナスビだ。
そう――ナスビのように、その老人の顔は、醜く歪んでいる。老人の周辺だけ、特に濃い漆黒の背景でさえ、陽炎≪かげろう≫に揺らいでいるかの如く、ユラユラと歪んでいるのだ。
佐藤のボンヤリしていた脳が、じょじょに覚醒し出した。確か、前回、その得体の知れぬ老人は、太い樹木の幹すらバキ、バキと割りそうな耳をつんざく大声で喚いていた。
「ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ……」
今までのパターンから推察すると、今度会う時には、
「BBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB……」
という大声を耳にするだろう、と佐藤は思った。でも、良い霊なのだろうか? 彼に対して、危害を加えたことは一切なかった。女の子と老人は、その場所から移動できない自縛霊だ。
佐藤には、二人を黄泉≪よみ≫の国へ送れる、霊能的技量を持っていない。まして、それが可
能となる修験者の荒行を、あえてする気なんてさらさらない。自縛霊達には、心から同情はするが……。
佐藤は、いつも最後にもう一つの強力な霊と必ず出会うのだ。場所は、もうほとんど坂の終わり辺りだ。やはり、二つの霊とほぼ雰囲気は、同じだが……。彼は、激甚≪げきじん≫恐怖感を味わう羽目に陥る。
容姿は、前に会った霊とは、全く異なる。英語でGrim Reaper、Deathと言われている生命の【死】を司るとされる神だ。冥府での魂の管理者とされる。その容姿は……最悪の、
おぞましさだ。人間の【死】は、【誕生】とともに人生にとって重要な位置を占める。だから、「悪の存在」が、認知をされてはいるが、ほとんどの場合、宗教の中で最も重要な神の一つとされる。最高神あるいは、次位に高い神だ。その神を、崇拝の対象にしている宗教もある。ギリシア神話では、女神あるいは悪霊である。戦場で死をもたらす悪霊だ。翼を持ち黒色で、長い歯と爪が長く、死体の血を吸うのである。
 最後に、佐藤が出会うのは、この世の人に【死】を知らせる者だ。神の次なる者。その姿は、
必ずおぞましさという感情と恐れを与える。ボロボロのマントを、わざと着ており、その顔は、ほとんどミイラ化している。眼窩≪がんか≫は、窪んでいて、常に、馬にまたがっている。その右手には、大きくて鋭い鎌を強く握りしめている。そして、その凶器を乱暴に振り回しているのだ。その正体は――察しの通り、【死に神】そのものだ。
しかし、彼が傷一つ負わないのは当たり前だ。佐藤には、その【死に神】が、見えるだけだからだ。彼は、その眼窩の奥にある腐った目を見ない。というより、見てしまっては、さすがの彼も、死を受け入れることを意味する。当然、多くの人が【死に神】を見ているはずだ。
でも、もう、その人は、死亡している。黄泉の国の住民
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