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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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わずモテルのかもしれない。

祐樹の数多い友達の中で、一人だけ【霊感】がある佐藤 久仁夫≪さとう くにお≫がいた。佐藤は、大阪府の谷町≪たにまち≫四丁目の近くにある、実家からK大学に通っていた。
相撲の世界で使用する「タニマチ」の由来の地だ。タニマチとは相撲界の隠語である。ひいきにしてくれる客、後援してくれる人、無償スポンサー……などを指して「タニマチ」と言っている。
谷町≪たにまち≫四丁目は、大阪市中央区にあり、JR大阪駅の南に位置する。最寄りには、
大阪市営地下鉄の駅がある。谷町四丁目を、地元では「たによん」とよく略されている。佐藤は、「たによん」から、大阪梅田へ出て、阪急電車の特急を利用し西宮北口駅で降り、阪急宝塚線に乗り換え、K駅で降車する。
駅前には、途中K大を通る四台バスが必ず停車している。しかし、いつもK大生で寿司詰状態だ。そのため、佐藤は、よほどの事情がない限り、大学までバスに乗らないで、四十分ほど要し、徒歩で行くのが習慣になっている。三十分ほど長い坂道を上り、割りと平坦な道をノンビリと歩く。
毎年、四月の十日頃には、道の歩道に植えている桜の木が満開になる。時には、桜吹雪の中、十分歩いて大学の正門まで行く。桜の花びらを、まるでリボンのように頭にのせて……。そんな時、良い気分になり小さく幸福の吐息を、もらしたりする。至極の喜びをさりげなく感じるのだ。
大学へ行く途中の坂道に、薄暗い公園がある。
毎回、そこで九歳位の女の子に出会う。頭は、いまどき珍しいおかっぱだ。大きな漆黒の眼には、憂いと憎悪が混じり合っている。季節に関係なく、くすんだ黒っぽい花柄の半袖ワンピースを着て、いつも、目にも鮮やかな赤い靴で、石ころをけって遊んでいる。しかも、たった一人で……。いつ会っても、同じポーズをしているのだ。女の子の顔には邪悪な笑みが、貼りついていて、まるで猛毒を含んだ笑みだ、と佐藤には思える。周りの空気は、凍ったように冷たい負のオーラが充満している。しかも、辺り一面には、生魚が腐ったような耐えがたい匂いが充満している。何とも言えないその匂いが、彼の鼻へ遠慮なく入り込んでくる。彼の全身から不快感が、次々と湧き出すのだ。薄暗い公園には、ブランコや滑り台もある。たまに、その公園で近所の子供達が遊んでいるのを、見かける。が、誰一人として、その女の子に気づいていない様子だ。
佐藤は、今日もその子に出会った。できるだけ、その子と目を合わせないようにしようと試みる。でも、ついつい、彼はその女の子を見てしまうのだ。いまわしい怨霊だ。
前後をいく学生達は、何も気づかず歩を進めている。とはいえ、明らかに女の子を見ている素振りをする者もいるが、前を向き知らん顔をしている。
彼等の顔には、恐怖と女の子を無視しようという明確な意思が浮かんでいる。

 佐藤は
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