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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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ー、ゲー、ゲー、ゲー、ゲー、ゲー、ゲロ、ゲロゲロ、ゲロ、ゲー、ゲー…」 
従業員用と、客用トイレに全員なだれ込んだ。

普段、サイフォンコーヒーは担当の四名の従業員に任せている。
偶々≪たまたま≫智也が、自分で飲むブルーマウンテンをたてている時だ。
確か、四名の客が入店されたので、従業員が注文を聞きに、お冷を四つ用意して行く。と、なぜか三人しか席にいず、困った顔をして、三名分の伝票を見せ、
「マスターも、確かに四名様が入ってこられたのを、ご覧になったでしょう?」
彼女が何を言わんとしているのか? それを思うと、智也の身内より悪寒がし、吐き気を催す。
彼女に軽く頷くのが、智也ができる全てであった。そんな夜は、必ずと言っていいほど、悪夢にうなされるのだ。ゾンビのような魔物に追いかけられ、必死で逃れようとしても、スロ−モーションのような動きしかできない。とうとう、魔物に追いつかれ、
「お前の美味しそうな脳味噌を、この俺にくれ!」
叫ぶのと、頭を齧≪かじり≫つかれる恐怖とで、目を覚ます。ギヤーと喚く自分の絶叫に、夜
中に飛び起きてしまうのだった。少しの間、脳がボンヤリとして、本来の働きをなくしているが、少しずつだが正常になってくる。
ねっとりした油汗とも、冷や汗とも区別がつかない汗が、全身から吹き出しているのだった。

佐々木 卓也≪ささき たくや≫は、二十八歳、独身である。
JR西明石駅から南下すると林崎漁港があり、そこに近い、築二十年ほどのオンボロアパートに、母と二人で住んでいる。中学をやっと出られるくらい、お頭≪つむ≫の程度も寂しく、さらに悪い事に、世間が要求する協調性と積極性にも乏しい。だから、担任の先生の尽力にも関わらず、一社とて受け入れてくれる会社は、なかった。だが、「捨てる神あれば拾う神あり」は、卓也には真実だった。五十歳代のスキンヘッドの社長に拾ってもらったのだ。見るからにあちら系の、厳しく恐ろしい社長だ。彼が四店舗経営する居酒屋で職を得たのだ。ただし、アルバイトの身分で……。夕方の四時から夜中の二時まで、卓也は、安い時給で働いていた。子供の頃から、落ちこぼれの人生に甘んじてきたのだ。うだつの上がらないサラリーマンの父。ところが、卓也に優しかった父は、四十四歳の若さなのに、二十一年前に脳幹梗塞に罹患し、集中治療室で治療を受けていたが、4日後、医者の努力にもかかわらず、あの世に旅立った。
生命保険の死亡保険金三千万円は、母が銀行に全て預金していた。何かの時に、下ろすと彼にいつも言っていた。母は、正社員として四店舗しかない、小規模スーパーの鮮魚売り場で、白い厚手のビニール製前かけをし、汗水たらして働いていて彼を育ててきた。
風呂に入りしっかり体を洗っても、魚臭さが消えないと、母は、常々、こぼしていた。
母は、時代に翻弄
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