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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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時になっても姿を見せない。閉店作業を従業員四名と妻、母に任せ智也は、慌てて近くのポリボックスの警官に知らせた。だが、何の手掛かりも見つけられなかった。
一体、彼女達は,どこに消えたのだろうか? 開店してから、もう九十名程の女性達が、トイレで姿を消している。
兵庫県警に【喫茶かど女性消失事件】という名の捜査本部が立上げられた。智也達は、県警の鑑識活動に協力せざるを得なかった。二日間、店を休業にして隈なく鑑識が行われた。しかし、何の手掛かりも得られなかったようだ。智也を含め全ての従業員が事情聴取を受けた。が、同じ事柄を何度も繰り返し訊かれ、誰もがうんざりした。
マスコミもこぞって大きく取り上げた。新聞の一面にでかでかと、掲載された。そればかりか、TVのニュース、ワイドショウにも連日とりあげられた。それが、かえって宣伝となり、さらに客数が増加し出した。人間のDNAにある【怖いもの見たさ】が、そうさせたのだろう。

さらに奇妙なできごともある。
滅多にないことだが、週一度、客が誰もいない毎週金曜の四時きっかりに、四十歳ぐらいで小太りの男性が必ず来店する。カラン、カラン、カラン、カラン……と入口の扉を開ける。そして、いつも同じテーブルに座る。男性は、季節に関係なく、夏用の花柄ワンピースを着ている。流行遅れと言おうか、昭和四十年代らしき格好をしている。智也は、毎週金曜の四時近くになると、気味の悪さで嘔吐しそうになるが、従業員の手前じっと我慢する。
男は、生足でスリッパを履いていて、延ばしに延ばした髪を後ろで束ねている。さらに、死臭に似た吐き気を催させそうな悪臭を、辺りに振り撒くのだ。
ミックジュース、キリマンジャロコーヒー、かつ丼、神戸牛ステーキセット、特大ハンバーグセット、カツカレー、冷麺、ジャムトースト。それらをいつも、四人前注文する。よほどの健啖家≪けんたんか≫なのだろう。それらを残らずペロリと平らげるのだ。いつも新品の一万円札を数枚レジで支払ってくれる。
店にとっては有り難い客だが、奇妙なお客でもある。彼がいる間の約一時間は、誰もお客は入らず貸し切り状態であった。
最初は、後で三名の客が来るのかな、と誰もが思っていた。
彼は、四本のオシボリを交互に使った。大粒の汗を拭くためだ。顔中汗を吹き出しながら、黙々と料理を口に運んでいる。奇妙な服装をした男性だけであることを知ると、皆、変に納得した。
「有難うございます!」
皆が見送ると、彼は、必ず、振り返り、隙間だらけの黄色い歯と赤黒い歯茎を見せて、奇怪な唸り声を出す。その顔は、悪魔じみていた。いや、【悪魔そのもの】かも知れない。
「イッヒ、ヒッヒ、ケケケケ、イッヒ、ヒッヒ、ケケケケケ、イッヒ、ヒッヒ、ケケケケ……」 
彼が、去るといつも従業員達は、争ってトイレに急いだ。
「ゲー、ゲー、ゲ
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