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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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本棚には、多くの書物が整然と並べてある。父は、片時も惜しんで、熱心に勉学に励んでいる。酒、たばこ等は一切嗜≪たしなま≫ない。食事の時ですら、外国語の分厚い本を片時も離さず、熱心に読んでいる。
その父の姿を、彼は子供の頃から観察していたからだろう。

中古のベンツの代金も含め、喫茶店の諸費用を母から、全て借金した。店が超繁盛しているおかげで、たった二年半で借金を返済できた。上手く経営すれば、たかが喫茶店一店でも、毎月百万円以上の純利益をもたらす。智也は、今、ジャガーの新車に乗っている。明石大橋の本州側の起点である、神戸市舞子近くにある五LDKマンションを、朝五時半に出発する。妻、母、TVCFで良く登場する純白の大型犬を乗せて……。賃貸だが、彼等は、九階の東向きの角にある豪華な住むマンションに住んでいる。しかも、四十坪のサンガーデンがある。
五十分ほど山越えをしながらドライブして、やっと店に着く。金物で有名な兵庫県M市にある神戸電鉄S駅近くにある店だ。
購入した時には、産まれて六十日だった、スイス山岳救助犬グレートピレニーズである愛犬セシルsesiru)も、今では体重五十キログラムをゆうに超える成犬になっていた。なぜ、セシルという名にしたのか? 智也が尊敬しているフランスの監督の名が、【セシル ビ デミル】だからだ。日本でも有名な監督である。セシル・B・デミルは、チャールトン・へストン、ユル・ブリンナー主演「十戒」を指揮した名監督だ。彼の映画は、どのシーンもまるで絵のように綺麗だ。四時間というかなり長い映画だ。が、チャールトン・へストン演じるモーゼが、【出エジプト】から有名な、海を二つに割るシーン。シナイ山で神から十戒が書かれた石盤を受けとるシーン。彼は、ビデオ店で借りて、何度も観て強烈な感動を受けた。だから、最初に買う犬はセシル、次はビー、最後にデミルという名にした。ビーは、がさつだがスヌーピーのモデルのビーグル犬だ。デミルは、ラブラドール犬である。もちろん、三匹とも店に連れて行きたかったが、セシルだけにした。後の二匹は家に置いてこざるを得なかった。車で同時に三匹も連れて行けなかったからだ。二匹は、サンガーデンで自由に走り回っている。
智也夫婦は、年中無休で働いている。【欲と二人ずれ】で働いているのも、事実だ。金儲けをするためは、当然だと二人とも考えていた。自分が経営者だからこそできるが、雇われの身であるなら、休みが無いのはきっと苦痛に違いない。

喫茶店を始めて後に、お客さんや近所に住む人から聞いた話では、今まで経営者は長くて一年だけしか営業できないほどの不振店だった。さらに恐ろしいことに、必ず、今までの経営者、あるいはその奥さんが、自殺、交通事故……など、災難に遭って命を落としたようだ。その原因は不明らしい。つまり、不審な死を遂げてい
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