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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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た女性だ。方や、ほんわかと人を包み込むような雰囲気を持つ小西さんは、ポッチャリ型である。が、どちらの従業員も愛想が良く、お客様には好評であった。智也は、店を年中無休にし、朝七時〜夜七時まで営業した。毎日、彼等はマンションを朝五時半に出て、店の開店準備に忙殺された。智也は二十八歳、妻の真理は二十五歳である。二人は、中規模の居酒屋チエーン店で知り合った。紆余曲折≪うよきょくせつ≫を乗り越え、一年の交際を経てやっと結婚にこぎつけた。
真理も高校卒業以来、サービス業で働いていたので、厨房での経験が豊富であった。
智也は、ネットでいろいろと検索し知識は仕入れてはいた。が、コーヒー店の実際の経営に関しては、ズブの素人である。そのため、オープン一週間前から、祐樹に様々な喫茶店のノウハウを教えてもらった。祐樹は、サイフォンコーヒーの立て方から、平均的な喫茶店で出すメニューを、一から智也に教授したのだ。
智也達には、コウノトリが赤ちゃんを未だに運んでこない。二人は、チヨッピリ贅沢な生活を送っていたので、貯金を一切していなかった。【宵越しの金は持たない】江戸っ子と同じだった。一言で言うと、浪費家だった。全額を納めたのは、小夜≪さよ≫だった。一人っ子の智也を溺愛する五十四歳の母親だ。
「生前の美空ひばりさんに、凄く似ているわぇー!」
と皆から言われるのが、自慢である。
彼の父も母と同じ年令だ。父は、関西の有名国立大学を出て、大手メーカーで総務部の部長職
にある。社長の信頼も厚く、役員の候補に挙がっているほどに優秀である。その父に比べて、母
親の小夜が甘やかして育てたせいだろうか? 智也は、小学校の頃より成績は下で、商業高校を何とか卒業するのが精一杯だった。父親は仕事一筋であった。悪い意味での放任主義であったのも、大いに責任がある。残念ながら、大学に進学出来る偏差値では到底なかった。
無情にも、父の優秀な遺伝子は、一人っ子の彼に、受け継がれなかったのだろう。頭脳の方は明晰≪めいせき≫ではなかったが、人並み以上の努力家である。
高校卒業以来、居酒屋チエーンで働いていた。全国で六十九店舗の居酒屋を経営する大規模企業である。途中で、見聞を広げる目的で他の居酒屋チエーンに変わった。もちろんだが、未だ店舗で店長として働く社員だった。智也は、幹部を目指して彼なりに努力していた。夜遅く帰宅しても勉強は欠かさなかった。飲食業の基本から、経済学、経営学等だ。初めは理解を超えていたので、苦戦を強いられたが、何度も何度も繰り返し勉強に励んで少しずつだが、理解できるようになってきた。多分、大学で学ぶだろう書籍の数々を読破し、身に付けてきたつもりだった。勉強が好きなのは――成績とは、悲しいかな比例しない、それが世の常――父親の影響に違いないだろう。父は、仕事から帰ると直ぐに、書斎にこもる
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