呪われた喫茶店
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度が過ぎている! 祐樹、そう思わないか?」
祐樹は、ただ黙ってうなずいた。だが、智也の妻と母は違った反応を示した。
智也の妻と母は、この喫茶店をとても気に入ったようだ。
「そんなに、けなすものじゃないわよ! 素敵な店だわ。お母さんだってそう思うでしょ?」
母も妻と同意見だ。
「大きさもあるし、綺麗にすればいい店になると思うわ。智也、ここに決めなさいよ!」
やはり、彼にだけ霊感があるのか? 祐樹にこの店の前オーナーについて尋ねた。すると、彼
は、スラスラと語り出した。
「四十歳位の陰気な女性で、社交的ではなかったよ。お客が来ると顔を隠したらしい。根暗なタ
イプだったらしい。と言うより、変人だったようだ。俺も面識がないんで、詳しくは知らないが……」
「へーえ。そんな人が、よくもまあ客商売の喫茶店を経営出来たなぁー。呆れて物も言えん。多分、経営不振に陥って店を閉めたのだろー?」
陰鬱≪いんうつ≫な顔をした智也が、祐樹に、なぜか、小声で問いただした。すると、祐樹は前オーナーについて語り出した。
(やはり、祐樹は細かな情報を収集していたのだ)
智也は、祐樹に裏切られた気分になったので、それが顔に出たのだろう。
祐樹は、慌てて少し詳しく語った。
「そうじゃないんだ。崖から落ちて、夫婦ともども亡くなったらしい。幸い子供はいなかったようだが」
「……」
智也は、一瞬言葉を失った。
喫茶店は、築約二十年の古臭い外観と内装だった。とは言え、九九席もある大きな平屋建ての
喫茶店である。敷金七百五十万、家賃四十万はリーゾナブルな値だ。しかも、都会では、滅多にない四十四台駐車出来るアスファルト敷き駐車場を有する。それらが、最初に感じた違和感と背筋の寒さを智也に忘れさせた。
即座に、皆は、OKした。智也だけは【何者】かに操られるような気がしてならなかった。だが、しぶしぶ家族の意見に従わざるを得なかった。八月末には、店から数十メートルしか離れていない近さにある、管理会社の山下ハウジングと諸契約を済ませた。
オープンは、九月九日にすることに決定した。山下ハウジングの社長は、色黒で馬のような長い顔をしていて、智也にとって最も嫌いなタイプだった。偉そうに、古い四灯丸目のBMWを乗っているのも、気に喰わなかった。しかし、ビジネスはビジネスだ。でも、少し心理的抵抗をぬぐえなかった。
が、喫茶店は掘り出し物だ。全て気にいる物件は存在しないことも、智也は良く承知していた。
オープンまでの期間、智也を含む家族三人で店舗の清掃に汗を流した。必死で、色んな所に付着した油汚れ、煤汚れと格闘した。特に厨房の油汚れは、とても酷かった。三人で挑戦したが、とても歯がたたなかったので、清掃専門業者に委託した。三十万円の出費は、当初の計画には入っていなかったが。それも
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