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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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いきさつ≫はこうだ。
阪急電車の宝塚線で、宝塚から梅田に向かう途中に「中山寺」という駅がある。聖徳太子が建立した日本最初の観音霊場だ。「極楽中心仲山寺」と称されている。安産祈願の霊場として、皇室、庶民より深く信仰を集めている。豊臣秀吉が、祈願して豊臣秀頼を授かったとされる寺だ。中山一位局が、明治天皇を出産する時に安産祈願し、無事出産した。このことから、日本唯一の明治天皇勅願所となり、安産の寺として知られている。
智也、妻の真理子、母の小夜≪さよ≫三名が、参拝しょうと意見がまとまった。家で読みかけ
の書物を読みたいからと辞退した父以外、愛犬も含め全員だ。自宅マンションから、例の喫茶店へ車で向かった。七年前、四度目の挑戦でやっと手に入れた、免許証を交付された一カ月後に、念願の車を手に入れた。マツダの最上級セダンとして長年生産されていた中古のルーチェだ。その車で、第二神明〜阪神高速〜名神を乗り継いで、尼宝線を北に進み国道百七十六号線を走っていた時だった。ショールームに展示してあった中古のベンツを、ショールームでじっくり見せてもらった。その結果、母が運命的な出会いをしたかのように、大変気に入って買った。財務省は、もちろん、彼の母だった。

祐樹は、その日は営業車でお得意先を回っていた。約束した午後二時きっかりに、現地の喫茶店で智也に会った。智也は、複雑な表情をして言った。
「よう、元気か祐樹? 何年ぶりかなぁ? 随分会っていないなぁ。聞くところでは、お前は出
世しているらしいなぁー。羨ましいよ! 子供の頃から、もっと真面目に勉強しとけば良かった、
と今になって思うよ!」
 祐樹は、そんな彼に向って努めて明るく言った。
「もう、四年位会ってないぜ! お前は、相変わらず日に焼けた健康そうな顔だよ。羨ましいよ! 
実際……」
挨拶も簡潔にして、早速、店の中を見ることにして、家族を車から降ろした。
智也が、その建物を一瞥≪いちべつ≫した瞬間、妙な違和感と背筋がゾクゾクとする得体の知れぬ恐怖を感じた。剃刀の刃のうえを歩いているような、危うい恐怖に全身満たされたのだ。暑い季節なのに、歯の根も合わぬほど、全身震えた。
愛犬のスイス山岳救助犬グレイトピレネーズは、まだ毛が生え揃っていない細長い尻尾を、後ろ脚に入れていた。迫力のない乾いた吠え声で、喫茶店に向かって、うなり続けている。
智也達は、四段のステップをのぼり、喫茶店へと入った。すると、益々オゾマシさが、彼の周囲に立ち込めてきた。店の中は、奇妙な暖簾≪のれん≫があちこちにぶら下げてある。下手な字で書いた藍色のPOPが、そこかしこにぶら下がっている。照明も薄暗い。店の中にいると、お化け屋敷の中にいるようだ。智也は、無理に平然として祐樹に言った。
「前のオーナーはどんな人だったんだい? ……悪趣味も
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