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呪われた喫茶店
呪われた喫茶店
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ると、喧騒≪けんそう≫とタバコの紫煙
に包まれる。換気扇は、一カ所しかないのがその原因だろう。そこで、その日の講義を終了した
学生。講義をサボっている学生。次の講義を待っている学生達が、たむろしていた。浅田は友達
を探した。何人かを見つけ、席が空いている横に座った。四人掛けにイス。すでに、三人がいた。
一人は無精ひげの山下。二浪して入った学生だ。国立K大を受験したが、失敗した。止む無く、
ここに入学した態度がデカイ奴。もう一人は、見るからに気の弱そうな吉田。現役で、当校に入った学生だ。もう一人は、哲学者のようにいつも難しい顔をしている大野だ。
 祐樹も、そんな彼等の仲間だった。
祐樹は、大学の四年間、真面目に講義を受けていた。前期、後期のテスト前に、よく友人達に、
自分のノートを貸していた。彼は、『優』を多く取得した。だからこそ、上記の企業にトップに
近い成績で入社出来たのだ。今は、すでに営業課長として同期のトップとして活躍している。知り合いに会うたびに、目に入れても痛くない四歳の一人娘を自慢していた。
(親馬鹿とはこのことを指す言葉だろう!)
子供のいない智也は、内心軽い嫉妬を覚えていたのだった。
智也は、妻、母親、愛犬を、マンション二階の駐車場でベンツに乗せた。智也が丁寧に乗っている愛車だ。愛犬は、生後四カ月の真っ白の縫いぐるみのようなグレイトピレネーズ。伊丹≪いたみ≫の犬専門店での話だ。最初はスヌーピーのモデルとなった、ビーグル犬を買う予定だった。だが、彼は真っ白で可愛い犬に、一目惚れしてしまった。父がアメリカでチャンピオン犬、母は、イギリスでチャンピオン犬だ。
だが、値札を見て腰を抜かしそうになった。POPには、五十万円の値が堂々と記してあったからだ。店員さんの勧めと、彼を見つめるつぶらな瞳のグレイトピレネーズに負けた。
「明日必ず買いに来ますから、誰にも売らないでください! お願いします!」
店員さんにそうお願いし、母に借金を頼むため、慌てて西明石まで車をとばした。翌日、開店
前からそわそわし、自動扉の開くのを待っていた。グレイトピレネーズを手に入れ、女性店員の細々した説明を上の空で聞いていた。

吉崎智也の愛車は、五年落ちのベンツだ。全体はベージュだが、ドアーから下が濃いベージュのツートンカラーである。彼の駐車場は二階にある。白いロールスロイス、ベントレイ、赤のフェラーリ、キャデラック……などの外車が大半を占めている。だから、彼は大きな顔はできないらしいが……。
彼は、毎晩濡れたタオルで汚れを取り、乾いたタオルで乾拭きしていた。休みの日は必ず洗車場で丹念に愛車のベンツを洗っている。所有する物は、例えケシゴム一個でも大事にするのが智也の性格だ。
実際にベンツの代金を現金で支払ったのは、彼の母だ。
その経緯≪
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