呪われた喫茶店
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ない木田が漂っている。天井近くで、フラフラと揺れながら、祐樹の顔を見てにっこり笑っているのだ。
幽体離脱は、生きている人間の肉体から霊魂が浮遊する現象だ。祐樹が読んだ超心理学の書が
正しいとすればだが。なのに、木田は【正真正銘の死者】である。木田は、祐樹の脳に直接語りかけてきた。
「佐藤、君は僕が見えるんだろう? しかも、僕以外の霊も見えるんだろう? 前も言ったよう
に、ぜひとも協力して欲しい思考実験がある。頼む! 僕の願いを叶えてくれ。君しかいないんだ!」
というなり、木田を囲むようにぼんやり霞≪かすみ≫がかった。木田の霊が次第に消えていく。もう、輪郭さえ消えている。本人はまだ話の続きをしたそうだったのに……。
(彼は、具体的に何の思考実験を望んでいたのだろう? 今さら、そんな事をそんたくしても、どうにも、仕方ない。木田の冥福を祈るのみだ。どうしても俺に頼みたいのなら、夢にでも出現するだろう?)
彼等は、両親に告別式にお邪魔する旨を伝えると、大変喜んでくださった。以前、何度も泊に行き歓待を受けた。再度ご挨拶をし、祐樹は途中友達と別れ、寄り道をしないで、明石の家に帰った。母に頼んで大量の塩で清めてもらった。その夜は、二階のベッドに潜り込むと、朝まで夢すら見ずにぐっすりと眠れた。翌日は、母の朝食作りの物音で目が覚めた。だが、不快な音では、なかった。素早く着替えを済ませと、一階の居間に降りて行き、難しい顔で新聞を読んでいる父の横に静かに座った。今は、大証に株を公開している商社の社長の職を、精いっぱい努めている。
が、その経歴は変わっていた。父は、子供の時から神童と呼ばれていた。皆の期待に応じるように、日本の最高学府で博士課程を終了後に、アメリカのハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、プリンストン研究所で研究に励んでいた。博士号はもちろん持っているが、その研究対象は、物理学の一分野だ。物質の最も基本的な構成要素(素粒子)と、その運動法則を研究対象とする素粒子物理学を学んでいた。およそ、会社の経営とは、全く関係がないように誰でも思う。浅田はそんな父を心から尊敬している。多くの事柄を学んだし、良き相談相手でもある。浅田は、せっかく大学に入ったのだから、出来るだけ、教養を積もうと努力した。多くの友人にもめぐりあった彼等から様々な種類の情報を、得る事ができた。企業の、業績、将来性……など。
【その事は、就職後の俺の仕事にも非常に役立った】と、浅田はいつも感謝している。
経済学部の本館地下一階には、喫茶店がある。
四十名が座れるだけの小さなスペースしかなかった。そこでは学生達がコーヒー等を飲みなが
ら議論等をしていた。当然、黙々と書物に目をやっている学生も一緒だった。古びたドアーを引
くと、カラン、カラン、と頭上で鐘が鳴る。一歩中に入
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