第240話 ジェナ・ライアンの戦い
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自分達の目的はシンジケートのボスを捕縛することにあり、深追いするメリットもない。
「で、でも……」
「俺はこの世界から抜け出せる力を持った上で、足を洗うより義理を果たすことを選んだ。変われたはずの人生を変えなかったのは、俺が自分で決めたことだ」
「……」
ジェナとしてはこの男ともっと話がしたいという気持ちがあったが、今はそれどころではない、という理性の方が上回っていた。
「じゃ、じゃあ……」
「……」
躊躇いながらも、ジェナは再び手錠を手に取り――「鉄拳兵士」の両手を拘束する。彼は一切の抵抗を見せることなく、ただ静かにそれを受け入れていた。
だが――それで決着、ではなかった。
「あらま。もう全部終わってたのかよ、こりゃ意外な展開だ」
「あっ……!? イ、イチレンジ先輩!」
「……!?」
彼ら二人の前に――「鉄拳兵士」に倒されたはずの「救済の超機龍」が現れたのである。破損した額から、血を滴らせて。
その光景にジェナは安堵し、「鉄拳兵士」は衝撃を受けたように固まってしまった。
「もう、心配したのよ! 『鉄拳兵士』があなたを倒したなんて、言うから……! それより、そんな状態で動き回っちゃダメじゃない!」
「はは、まぁ一度倒されたのは本当さ。――ていうか、ホントにすげぇなジェナ。他の連中はともかく、『鉄拳兵士』までとっ捕まえちまったのか?」
「えっ? いやその、それは……」
一度倒された……という割には至って元気な龍太の姿に、ジェナは胸を撫で下ろす。その一方で、ここで起きていた一連の出来事を思い出した彼女は、言葉に詰まってしまっていた。
「じ、実はね。『鉄拳兵士』が私を助けて――」
そこで一拍置き、「鉄拳兵士」のことを説明しようと彼女が彼に視線を向ける瞬間。
「ジェナ、と言ったか。済まない」
「――えっ?」
膝をついて逮捕を受け入れていた彼は、突如勢いよく立ち上がり――力任せに手錠を引きちぎってしまった。
先程までと矛盾する行動と、迸る殺気にたじろぐジェナ。そんな彼女を庇うように、龍太が立ちはだかる。
「俺はボスに、『赤い悪魔』は仕留めたと報告してしまった。例え裏切り者であろうと、その言葉を嘘にするわけにはいかん」
「……ふぅん、そういうことか。まあいい、せっかく俺を本気にさせたんだ。そっちもその気になって貰わなきゃ、張り合いがない」
その「鉄拳兵士」の言葉と周囲の状況を照らし合わせ、龍太はおおよそのいきさつを把握する。
そして、改めて決着を付けるために――お互いが、拳を握り締めるのだった。
「イチレンジ先輩、『鉄拳兵士』……!」
それを見届けるジェナの胸中など、知る由もなく。
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