第240話 ジェナ・ライアンの戦い
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ェナを見上げる。彼女の瞳は、台所に巣食う害虫を見るかのように冷たい。
その殺気を浴びたボスは、股から温かい湯気を上げながら恐怖する。もう彼には逮捕される未来より、これから始まるであろう折檻の方が恐ろしいのだろう。
「さあ、今まで私達を苦しませてきた分……たっぷり償ってもらうから。覚悟しなさい」
そんな彼を冷ややかに見下ろしながら、ジェナはゆっくりと歩みを進める。
その胸中には、今日のために繰り返して来た戦いの日々が渦巻いていた。
(私は、日本人が嫌いだった。父さんや母さんを奪った、あいつらが憎くて、たまらなかった。それと同じくらい……私の友達を攫い続けてきたこいつらが、許せなかった)
ふと、彼女の胸の中に一人の男が現れる。その男を思い浮かべた彼女は、表情に憂いの色を滲ませた。
(そんな私を……あの人は、自分の腕さえ犠牲にして助けた。あいつらの凶弾に傷付いて、私達から石を投げられても……あの人は辛い顔一つ見せずに、戦い続けてる……)
彼女の中に在る、その男の存在は――さらに大きくなっていく。ジェナ自身、それを自覚しつつも……止められずにいるのだ。
(私は多分、あんな風には生きられないし……今まで受けてきた痛みを忘れることもない。それでも……戦い続けていればいつか、この痛みも乗り越えていける。そんな気がするの)
そして、その憂いを断ち切るように彼女はキッと顔を上げ――懐から手錠を取り出した。この戦いに、終止符を打つために。
(……だから私は、せめてこの戦いで彼に証明したい。あなたが国に帰っても、私はきっと大丈夫だ――って)
この任務への飛び入り参加は、いずれ来るであろう別れに備えるための、彼女なりの禊だったのだろう。手錠を握る彼女の手は……近づく別離を恐れるように、震えている。
――その時。
「あぐッ……!?」
ジェナの手が、突如何かに締め付けられるかのような痛みに襲われる。
咄嗟に、その原因を求めて振り返った彼女は――戦慄した。
「……『赤い悪魔』は仕留めた。残る敵は、この女一人のようだな」
「なッ……!? い、いつの間にッ!?」
仮面の奥から響くような音を立て、「鉄拳兵士」はジェナの腕をねじり上げる。
「あ、あぁあ……ッ!」
その痛みに呻く彼女を目の当たりにして、腰を抜かしているボスが歓声を上げた。
「おおお……! よくやった『鉄拳兵士』! よくぞワシの恩に応えた!」
「……」
情けない格好のまま自分に縋り付く主人の姿を一瞥し、銅色の拳士はジェナの方へと向き直る。形成を逆転された少女保安官は、気丈な態度を崩さないまま彼を睨み付けていた。
「さあ、その小娘を叩き殺せ! ワシを脅かした罰だ、バラバラにして鳥の
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