第165話 無断出動と開幕タックル
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」、とも。……俺は何かの病気なのか?
だとすれば早急に原因を突き止め、改善に努めなくてはならないはずなんだが……その話を振ってみても、今のようにため息をつかれるばかりで、全く取り合って貰えないのである。
まるで、自分で気づいて何とかしろ――と、呆れているかのように。
「ねーねー、一煉寺君また鈍感スキル発症してない? 全然気づいてる気配が見えないんだけど」
「その線で間違いねーだろうなぁ……。アイツ、野球部マネージャーの琴美ちゃんのアプローチも『親切心』で片付けやがったしな……いい加減爆ぜろよマジで」
「ま、そのあとに野球部全員から追い回されてたんだし、そこは勘弁してやれよ。世間的に考えたら、今のあの状況が既に滅殺モンだろ」
「全くだ。あの救芽井樋稟がクラスメートってだけでも信じられねーってのに……よりによって、あいつが婚約者だなんてなぁ……。ヒーローの仕事で苦労してる〜なんて話が町に出回ってなけりゃ、嫉妬されるどころじゃ済まなかったぜ」
「あの病的な鈍感のおかげで、こっちのことにも気づいてないみたいだし……案外、アレは治らない方が本人のためかも知れねーな」
そんな俺を遠巻きに眺めるクラスメート達の視線も、どこか冷たい。いや――生暖かい。いつものことではあるのだが。
さながら、「どうなるか見物」という気持ちを訴えるような眼差しだ。俺に一体、何が起こるというのか? ……クッ、どうにもわからないことだらけだぜ。
「おーし、授業始めるぞーテメーら。そこの爛れた青春送ってる三名も、いい加減席に戻りやがれ」
「たた、爛れてるってなんやねんっ!? アタシらのはちゃんと清い青春やからっ!」
そこへ現れる担任の言い草も、普段通り教師にあるまじきものであった。矢村の「お前が言うな感」が僅かに漂うツッコミも、今となっては様式美となりつつある。
――資格を取る前から、何も変わっていない。この松霧高校で過ごす日々も、町の人達も、クラスメートも。
それはきっと、いいことなんだと思う。少なくとも、この場所が何かに脅かされているわけではないのだから。
しかし、いつまでもここで居心地のいい思いをすることはできない。
この一年間、俺は松霧町を拠点にした上で、東京や外国にレスキューヒーローの一人として赴いてきた。この先プロとして生きていくならば、外部からの出動要請も増えて来るだろうし、この町に留まることは難しくなる。
生まれ育ったこの町、松霧町。そこで暮らす商店街の皆やクラスメート達、着鎧甲冑部の仲間。彼らと、ずっと一緒にいることは……許されないのだ。
――いつかは、ここを出ていく時が来る。それは決して、遠い先の話ではない。
授業の傍ら、青く澄み渡る空を見上げ、俺はいつか見ることがなくなる町
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