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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
真・四十八話 才女の覚醒、そして……
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あの子を守りたいの!!」って言ったんだ。守られる側だろって思わず言ってしまったよ」
「でも、お前は泣きながらもでも決して諦めずに剣を振り続けた。そしてそんなお前と一緒にあの子は剣を振るった。まあ、あの子の場合は既に型が出来ていたから基礎的な事しかしなかったがな」
そこまで聞いてなのはは理解が出来なかった。自身の父親が大怪我した事は知っている。それによって家族がバラバラになりそうだったのも知っている。だが、そこでそんな出来事があった記憶など自分にはないのだ。
「そんな事があったんだ……記憶にないか?」
「ぜ、全然ないの……」
「…………さっき、なのはは木刀を交差させて俺の剣を受け止めたよな?」
「う、うん……」
「あれは教えて間もない頃、俺が少年と共にお前に教えた防御の基本の型だ。女性の細い腕でも強い攻撃を受け止める事が出来る」
「………………………あ」
その時、なのはの中で何かがカチリ、と嵌まる音が聞こえた。
記憶が流れ込んでくる。一緒に素振りをする光景、木刀を打ち合っている光景、汗をタオルで拭きながら、楽しそうな笑顔を浮かべている光景。
そしてそのいづれの光景にも必ずいた男の子。それは聖ではなかった。放たれる独特な雰囲気、それに該当する人物はなのはには一人しか思い当たらなかった。
「全、君……」
「思い出したか……」
「うん……うん……思い、出した………!」
なのはは顔を手で隠して嗚咽を漏らす。それが思い出した事によるうれし涙なのか、それともこれまで思い出せずに無意識の内に苦しめてきた全の事を思った涙なのかはわからないが、それでも悲しみの涙ではない事だけは確かだ。
「…………今、全は途方もない危機に直面していると思う。ただの勘でしかないがな。救ってやってくれ。あのバカな優しい奴を」
「うんっ!!」
そしてなのはは走り出した。自分と家族を守ってくれた優しい彼の下に。
全は何もない真っ白な空間で横たわっていた。その瞳は固く閉じられている。
まるで死んでいるかのように横たわったままだった。
そんな彼に近づく影。その影はまるで愛しい我が子を見つめるように全を見ていた。
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