第114話 最強のお守り
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彼が放つ殺気にさらされている四郷。その表情には救芽井ほど露骨に顕れてはいなかったが、小刻みに震える小さな肩を見れば、不安と恐怖に包まれているのがよくわかる。
……恐らく彼の姿を見て、思い出しているのだろう。十年間の闇、その全てを。
――大丈夫。もう、大丈夫だからな。確かに怖いっちゃ怖いけど……俺は、こんなことで逃げ出したりなんかしない。
その意思は気付かぬ間に顔に出ていたようで、俺を見ていた瀧上さんは何かに感づいたように一瞬顔を上げると、両手を頻繁に開いたり閉じたり……という手足の動作確認のような動きを繰り返し始めた。――どうやら、こっちがやる気だってことは十分に伝わってるらしいな。
「……ん?」
その時。俺はふと、四郷と目が合った。
――次の瞬間、彼女はハッとした表情で目を見開くと、勢いよく席から立ち上がり、アリーナと客席を隔てる手すりをなぞるように走り出した。こちらに向かおうとしてるみたいだが……一体どうしたんだ?
「そ、そんなの認めるわけがないじゃない! 私達救芽井エレクトロニクスは、絶対にあなたの参加を認めないわ! おとなしく、元の客席に帰って!」
その時、俺の背に隠れていた救芽井が、震える脚で俺の前に出たかと思うと、思い切り彼を否定する旨を叫び出した。脚だけではなく、声も微かに震えていたが……彼女の視線は、しっかりと瀧上さんの姿を捉えていた。
……救芽井も、嫌というほど感じているのだろう。今の瀧上さんが、いかに危険な存在なのか。
「オレが尋ねたいのは、直に闘うそこの少年だ。君の了見など知ったことではない」
「なっ……私は救芽井エレクトロニクスの名代よ!? 何をバカなことを――うっ!」
しかし、瀧上さんに退く気配はない。あくまで了解を求めたいのは、実際に戦う相手である俺の意志らしい。
救芽井はその言い草に反論しようとする――のだが、瀧上さんの無言の眼力に、思わず腰を引いてしまう。ここまで言えば引き下がるだろう、という油断もあったのか、さっきまでの威勢はすっかり崩されてしまったようだ。
俺は再び彼女を庇うように、瀧上さんと視線の交わる位置に立つ。
――きっと、このままやらせたら危ない、って解りきってたんだろうな。ここまで頑張ってくれて、ありがとう、救芽井。……だけど、心配はいらない。俺は逃げないし、負けない。お前のためにも、四郷のためにも、そうしたいと願った俺のためにも。
俺は右手に嵌めた、真紅の「腕輪型着鎧装置」に一瞬だけ視線を落とし、すぐに瀧上さんに向けてキッと顔を上げる。
――俺には、救芽井がくれた最強のお守りが付いてる。兄貴がくれた技が付いてる。久水兄妹がくれた度胸が付いてる。矢村がくれたパワーが付いてる。きっと、負ける理由なんて、どこにもない。
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