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フルメタル・アクションヒーローズ
第114話 最強のお守り
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 しかも、この存在の異様さを成り立たせているのは、その荘厳な外見だけではない。彼の体重に耐え切れなかったことを意味し、無惨にひしゃげたアリーナの床が、その威圧感を無機質なまでに表現していたのだ。

 瀧上さんも、四郷と同じ「新人類の身体」。しかも単純な迫力だけで、彼女を大きく凌ぐ存在でもあるという事実を突き付けられ、俺達は瞬く間に戦慄に包まれる。

「こ、こんなのって……こんなのって、アリなんっ……!?」
「あの時、ワガハイを捕らえたあのパワー……なるほど、これで合点がいく」
「あ、あんな人が、な、なんで今まで……!?」
「……あのお方。ワタクシ達だけならまだしも、鮎子まであんなに怯えさせて……! 強そうなのは認めてもいいでしょうけど、それ以上に気に食わないざます!」

 思い思いの反応をさらけ出し、それを隠す余裕もない救芽井達。彼の素性を既に知らされ、心に防波堤を持っていた俺でさえも、実物を目の当たりにして怯みかけていたことを考えれば、こうなるのも仕方ないと言える。

 そして「新人類の身体」への変身を遂げた瀧上さんは、審判席の方をゆっくり睨み上げ、審判側に了承を求めるような視線を送る。……求めるというより、もはや脅迫するような眼光であるが。

『――あなたの気持ちもわからなくはないけど、原則として選手交代は認められてはいないのよ、凱樹』
『そういうことだ。君があくまで一選手として、どうしてもこのコンペティションに参加したいと申すなら、救芽井エレクトロニクス側に了承を得るがいい。それができないのなら、君には退場してもらうしかない』

 だが、そんな瀧上さんに対する二人の反応は実に淡泊。審判席ごと貫かれそうなあの殺気に晒されてなお、眉一つ動かさずに、にべもない返事を出せるその胆力には感嘆するしかないな。
 ――欲を言えば、こっちに振らないで欲しいもんだが。

「……ほう」

 瀧上さんは審判側からの指摘を受けると、食い下がることも舌打ちすることもなく、新たな獲物に目を付けるかの如く、俺達に視線を移した。

「――ひっ!?」

 その視線に包まれた威圧に、救芽井は思わず顔を引き攣らせ、眩しい脚を震わせる。俺は彼女を庇うように前に立ち、瀧上さんと静かに視線を交わした。

「……」

 目を合わせているだけで、どこまでも飲み込まれてしまいそうな闇。彼の眼差しを真正面から受け止めて、一番に感じたものが、それだった。
 触れるもの全てを切り裂くようなこの眼光ゆえに、彼は堕ちたのだろうか。それとも、堕ちた後だからこそ、この眼差しなのだろうか。恐らく、その答えはもう本人にすらわからないのだろう。きっと、それがわかるのは、彼をずっと前から知っている所長さんと伊葉さん――そして四郷だけだ。

 俺達より近くで、
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