5. 髪、切ってよ
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少なくとも、提督には自分からバラしてしまったようなもんじゃないか……。頭の痛みが取れてきた代わりに、今度は顔が熱くなってきた……
「あ、あの……提督……」
「ん?」
「あのさ……このことは……さ」
「誰にも言わないよ。言ったら、俺が隼鷹に殺される……」
そう言って、相変わらずの苦笑いを浮かべる提督の横では、気持ちよさそうに寝息を立てる隼鷹がいる。気持ちよさそうに口をぽかんと開き、よだれを垂らして眠る淑女は……今は、誰よりも素敵な女性に見えた。
提督が、隼鷹の髪に触れ、いたわるように優しく頭を撫でた。隼鷹を見る提督の目は、まるで球磨を見るハルの眼差しのように、とても優しく、柔らかい。
その後提督が隼鷹のことを色々と話してくれた。隼鷹は、鎮守府で私たちが従軍していた頃から、私のことをずっと心配していたらしい。
私は、ずっとハルのことが好きだった。でも、ハルは球磨と通じ合い、そして二人の仲は強固で揺るぎないものになっていく。その横で、私はずっと静かに、ハルのことを想っていた。
隼鷹は、そんな私に気付いていたらしい。ハルと球磨が結婚するという連絡を受けた時、もし私がまだハルのことを好きでいたら、その時は、やけ酒にとことん付き合うつもりだ……そう考えていたそうだ。
「でもさ提督。隼鷹はさ。提督にはその話、してないんでしょ?」
「うん」
「じゃあなんでそんなこと知ってるの?」
「隼鷹が俺の淑女であるのと同様、俺だって隼鷹の紳士だ。隼鷹の考えてることは、手に取るようにわかるよ」
「そっか」
私の問いにそう答える提督の笑顔は、どことなく、球磨のことを話すハルの笑顔に、重なって見える。
愛する人のことを話す人の、心からの笑顔。
私が愛する人は、私の事を話す時、その笑顔を見せることはない。そして今後、永遠にその笑顔を見せることはない。
でも今、提督の笑顔と、その隣で気持ちよさそうに眠る隼鷹を見ながら思う。
私は、愛する人の笑顔を手に入れることはできなかった。
でも、私が愛するその人は、その笑顔を手に入れる事ができた。
ならば私は、それを喜ぼう。
愛する人が、愛する人の笑顔を手に入れることができた。それは、とても素晴らしいことじゃないか。
今なら、二人を心から祝福出来る。
……ハル、おめでとう。球磨と幸せになってね。
……球磨、私が愛する人を、どうか幸せにしてあげて。
その後私は、中々目覚めない隼鷹をほっといて、提督から温かいコーヒーを淹れてもらった。
「マイスイートハニーほどうまくはないけどな。まぁ飲まないよりは良いだろ」
そう言って笑顔で淹れてくれたコーヒーはとても美味しくて、隼鷹のコーヒーにも負け
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