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Secret Garden ~小さな箱庭~
『忘れ去られた人々編』
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百五十センチはありそうな母猪、その周りにいる体長三十センチ程の小さなうり坊は彼女の子供だろう。母猪は周りに敵がいないか確認し、食べ物に罠がないか確認し、安全確認をしてから子供達へ食べさせているようだ。……仲慎ましい親子をこれから殺さなければならないと思うと胸が締め付けられるように痛む。
 近隣の農家では猪が畑を荒らし丹精込めて育てた作物を食い荒らし、作物は全滅し商売が成り立たなくなったなど様々な被害情報をよく耳にするが、ルシア達が住む村で彼らが人間に何か害をもたらしたと言うことは一度もない。わざわざ人里に下りなくとも此処に沢山の食べ物があるからだ。人に害をもたらす者だから狩る近隣に住む狩人達と、なんの被害も受けていないのに猪を狩るルシア達の違い、それは他人や自分の生活の為に殺す善意か自分達が生きるために殺す悪意か。勿論ルシア達は後者だ。生きるためにはたんぱく質も必要、それを摂取するには他の生き物を殺し肉を食べるのが一番手っ取り早い。だから彼らは月に数回猪といった大型の獣を狩るのだ。

「行きますか……?」

 猪達が食べている餌の下には網が引かれている。繋がったスイッチとなる縄を斬れば猪達は網の中、捕獲成功というわけだ。縄を斬ろうと剣の柄を握りしめたルシアを師匠「待て」と止めた。どうして? きょとんとした顔で振り返ると師匠は見たこともないような神妙な面持ちで語り始めた。

「ルシア。お前こんな噂を知っているか?」
「噂……ですか? なんの?」
「……今この森には……出るらしいぞ」
「だから何がですか? ユッカル師匠」

 えらくもったいぶった言い方をする師匠に少々苛立ちを感じ始めたところで師匠はおもむろに語り始めた。その顔はどこか鬼気迫ったものを感じさせる。

「半透明の猪が出るそうなんだ! 嘘でも盲信でも見間違いでも幻でもないからな! 目撃例だって近隣の町村合わせて何十件もあるんだぞ!
 奴は怖いぞ、お前なんかが見たらちびること間違いなしだ。なんたって奴は半透明なだけじゃなくて、金色に輝く古代文字で書かれた帯のようなもので全身をグルグルに巻かれていて、人の言葉を喋るそうだぞ! 古代語だから何を言っているのかは分からないけどな。
 それに奴の吐く息は猛毒で少しでも吸っちまったら、身体がビリビリになって動けなくなってしまうんだからな! 神経毒だぞ! やばいだろ! この話を聞いただけでチキンなルシアくんはちびっちまっただろうな……まあ俺様レベルになればあんな奴くらい……」
「あの師匠……」

 どや顔で自信満々に語る師匠に申し訳なさそうに口を開いた。当然のりにのっていた師匠から厳しい視線を送られたがこればかりはしょうがない。だって……。

「師匠が話している間に猪達、餌を食べきって逃げてしまいましたよ……」
「なにぃぃ
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