『忘れられた人々編 』
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鶏のトサカを彷彿とさせる前髪をした男児にしては細い身体に背の低い兄の方――名はルシア。
妹の手編みの首まである温かい鼠色のセーターを着込み、腰にベルトを巻きそれを通して左側に下げているのは、居なくなった父が唯一残していった形見の品である"宝剣リリース"をぶら下げている。
白い鞘に海の波のような青白い模様が描かれ、柄の部分には希少価値の高い"アウイナイト"が埋め込まれている。
「おー、ルシアかー」
「こんにちは、ヤッカルおじさん」
「お前さんは今日も元気なさそうだなー」
鍬を振り上げた男はカッカッと大口開けて笑う。頭に乗せた紐付きの麦わら帽子を被り直すと、肩に下げているのは銭湯の模様が描かれたタオルで額の汗を拭く。
「今日もあちぃなー」
上はパーカーで下はダルダルのズボンに足元は長靴の動きやすい恰好をしている中年男は大口を開けて大笑い。ルシアも愛想笑いをする。
「……今年も駄目だったんですね」
目の前に広がる枯れ果てた台地を見つめ溜息混じりに呟いた。
この村ではもう何年も作物が出来た事がない。どんなに畑を起こしても、良いとされる肥料を撒いても、、死んでしまった台地は蘇がえらない。
「おう。今年もからっきしよ」
農業を生業としている農家の男はケロッとした表情で明るく答えた。もう何十年もやり続けていても駄目なのだ、もはや開き直るしかない。
「そういやー。ルシア、ヨナちゃんの具合はどんなだ?」
「……あまり良くはないです」
「そっかー」
ルシアの妹ヨナは齢八ながらにして重い大病を患っている。
女神の加護を受けられなくなったのと同じ、丁度百年前から流行り始めた謎の病。
罹った者は変な苦し気な咳をし始め、狂ったように発狂したり、化け物のような呻き声をあげ、のたうち回り苦しんだ後、奇声をあげ死に至るという恐ろしい病。
病の事は各国あげて研究されているが未だその解明には至ってはいない。治療方法も発見されず、苦しむ患者にしてあげれることは只傍で見守ってあげる事のみ。
咳をしたなら背中をさすり、寝具の上から出られない彼らの身の回りの世話をしてあげることしか出来ない。
未来ある子供達も、これからの大人達も、まだまだこれからの老人達も、関係なく襲い掛かり全ての光を奪い闇中へ引きずり込む事から人々は"闇病"と呼ぶようになっていった。
「じゃあルシア、お前さんが頑張って稼いで来ないといけねーな!
お前がだけがこの村の頼りでもあるしな。お前に倒れらちゃ、この村は終わりだぜ!」
ガハハハッと大きな口を広げ笑う農家の男はルシアの小さな背中を丸太程に太い大きな腕で叩く。
村一番の狩人のルシアは数少ない村の
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