棟章――見捨てたのは神か人か
『絶望の未来編』
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と少し広らけた広場のようなところに出た。真上に輝く赤い満月の光は妖艶的でこれから起ころうとしている悪夢を予言しているようだ。
「見つけたぞ!」
目の前に立ちふさがったのは魔術師を思わせる黒いローブを纏った男。顔は深々とかぶったフードで鼻元まで隠しているため分からない。両脇にある道、そして自分が走って来た背後の道からも同じような格好をした男達が現れた。彼らは自分を囲うように円形に並び四方の道を塞いだ。これでもう逃げる事は出来ない。
「…………」
顔を見合わせ頷き何かを確認をすると男達は、薄いベージュ色の唇を小刻みに動かしブツブツと小声で何かを唱え始めた。最初は聞き取れなかったそれは呪文だとすぐに解った。何故ならバラバラに唱えていたはずの言葉が少しずつ重なり始め一つの呪文となり、一つの詠唱となり、そして。
「さあ――来るのだ! 哀れな我が僕達よ!」
魔導士達がは両手を天高く掲げ唱え終わると同時、赤い月が綺麗な星一つ無い夜空一面に藍色の直径一メートルほどの円、魔法陣が無数に出現し円の外側は古代文字(ルーン文字)がびっしりと事細かく書かれており、円の中には白い線で五芒星が描かれていた。この模様を自分は知っている。これは召喚の儀式、此処ではない世界から異物を混入させる為の儀式だ。
グルルルル……グシャア!!
空を覆いつくすほどの魔法陣から召喚されたのは無数にいる黒い影。ぼとりと鈍い音をたて目の前に着地したこれはコールタールを思わせ、表面はプルプル動き、一秒として同じ動きを保っていない。スライム種と呼ばれる液体と固体の間の姿をした魔物と呼ばれる生物だ。同じ姿を一秒たりとも保っていられないはずなのにどうしてだ、奴らが見覚えのある人の形をしているように見えるのは。
ウウゥ……アァァ……。
奇声をあげる者。呻き声をあげる者。
魔物達があげる声は様々なのにその声に聞き覚えがあるように感じるのは何故だ。どして魔物の声を聞くとこうも胸が締め付けられ涙がとまらない。
「あれは決して"外界"に出してはならぬ物。貴様に怨みなどは無いが、此処で消えてもらおうか」
真正面に立つ魔導士は身に纏った赤いポンチョで隠すように肩から下げているショルダーバッグを指さし、それをよこせと吐いた。目元はフードで隠されているがきっとその瞳は自分を蔑んでいるのだろう。ニヤリといやらしく緩んだ口元がその証拠だ。
「……っ!」
ショルダーバッグを握りしめキッと目の前にいる魔導士を睨み付けた。魔導士達の狙いがこのバッグの中に在るものだという事は最初から解っていた事、だってこれは奴らから奪い取った物だから。
自分に与えてられた任務はこれを文字通り命懸けで奪って来た仲間達全員の想いを背負い"ある人"に
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