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Secret Garden ~小さな箱庭~
棟章――見捨てたのは神か人か
『絶望の未来編』
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光景はとてもそんな食欲のそそるものではない、全て吐き出され何も残されていない胃はまた何かを吐き出そうとえずく。
目を瞑り無我夢中で走っていた為気が付かなかった(気が付かないままでいたかった)が目を見張り現実からそらさずに辺りを見渡せば、目の前にあった物は肉。肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉。真っ黒に焦げて香ばしい臭いを発する人の形をした肉の塊ばかり。個々の名称までは分からないが、大切な仲間だった物には違いない。まだかろうじて残っていた衣服や装飾品に見覚えがあった、目の前に一杯に広がる仲間の死骸。見るも無残な黒焦げの死骸。なんで自分だけが生き残ってしまったのだろうと自責の念にかられ、どうして一緒に逝かせくれなかったのだと怒りがこみ上げる。だけどここで闘う事を諦めるわけにはいかない、こんな時でも思い出すのはやはり母の怒号。

――この闘いは例えこの命を我らの神???様へ返すことになろうとも、絶対にやり遂げなくてはならないことだ。誰が欠けたとしても振り返るな、前だけを見ろ、任務遂行だけを考えて走り続けろ!!

 まだ幼く何も出来なかった自分を護る為に犠牲となった母の最後の言葉。最後だと言うのに怒りの言葉と言うのがなんとも生真面目で融通の利かない母らしい。くすりと笑みが零れた。
そうだ。自分はまだ立ち止まる訳にはいかない。こんなところで足踏みをしている場合じゃないんだ。そう新たに意気込むと、再び前を向いて走り出した。足元から伝わる感触は正直言って気持ちの良い物ではない。肉を踏むのはかなり気持ち悪いこと、それが仲間の物だと思えばなおのこと。だがそんな事で走る足を止めてはならない、何故なら。

グルルルル……グシャア!!

 追手がすぐ傍にまで迫って来ているから。聞こえて来るのは獣の咆哮。獣と言ってもなんの生物かは判らない。声の主は"本来この世界には存在しないはずの生き物"だから。地獄の鎌を開けやってきた獣声はかなり近いものだった、木々の枝をぼきぼきと折っている音が聞こえる。こちらに迫って来ている証拠だ。

「もうここまで来てんのっ!? 早すぎるんですけどっ!?」

 足の速さには自信がある。仲間達の間でも一二を争うくらいに速いのではないかと噂されていた程。だから敵との距離はかなり離していたつもりだった。だがその考えは甘かった。いくら自分の方が足が速かったとしても、この精神的ダメージが多く歩き辛い地面は自慢の速さを減速させるに十分だ。
 ぐにゅり。ぐちゃり。ぐにょり。踏み出した先は肉、次に踏み出した先もまた肉。せっかく新しく新調した橙と白の縞模様の靴が台無しだ。お洒落をした方が良いと言ってくれた仲間の提案を断ってまで選んだお気に入りの靴だったのに、靴よりももっと大好きだった仲間の血で赤黒く汚れてしまった。

 走っている
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