第六十話 ヤン・ウェンリーのエコニア滞在記
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が、柔軟に修正を施すのは、他人に任せたいと思っている」
ムライ中佐は、相変わらず堅苦しい表情でベレーの角度を直した。
この人は、照れ屋と言う奴かも知れないなと、ヤンは思い好感らしきものを感じた。
ヤンは基本的に軍隊と言う存在を軽蔑していたが、
組織はともかく個人的には尊敬や信頼に値する人物は結構居るものである。
事件が一段落して、暫くしたある日、同盟首都ハイネセンから、
遠路はるばるという感じでFTLが入った。
「アレックス・キャゼルヌ中佐という人からです」
と通信担当の中尉に言われて、ヤンは通信室へ飛んでいった。
砂嵐に襲われたようなざらつく画面の中に、士官学校の先輩がいた。
「どうも大変だったらいいな、ヤン」
「人生を退屈せずにいられるのは幸運だと思ってますよ」
「責めんでくれて、ありがたいと思うよ」
「まずニュースだ。アルフレッド・ローザス提督が今年の3月1日に付けで元帥に昇進する事が正式に決定したよ」
こうして730年マフィアは全員が元帥に叙せられる事と成った。
ヤンは頷いた。アルフレッド・ローザスは、業績といい人柄といい、元帥の階位に相応しい人物で有ったと思う。
「もう一つ決定した事がある。お前さんの召還だ」
「はあ・・・・・?」
「帰ってこいよハイネセンへ。俺の結婚式に間に合うようにな。
どさまわりも、さしあたって中断だ」
キャゼルヌ中佐が今回の事件を利用してハイネセンへ早急に戻れるように手配してくれたのだ。
こうしてヤンは、共にハイネセンへ帰還命令の出た、パトリチェフ大尉とエコニアを離れたのである。
予定より3ヶ月ほど早いハイネセンへの帰還であった。
ヤン達の指摘でワインの横領が表沙汰になり国防委員会でも調査が行われる事になった。
調査は秘密裏に行われた結果、
ジャムシード星系同盟軍補給敞パーヴェル・コヴァリスキー大佐が腹心の部下100名と共に、
20〜30万個を横領している事が発覚した。
憲兵隊が収監に行く前にコヴァリスキー大佐と腹心の部下100名と家族共にジャムシードから、
輸送艦で逃亡したが事故により全員が死亡した。
その結果、今回の事件はパーヴェル・コヴァリスキー大佐が主犯であり、
コステア大佐以下各地の収容所の関係者の横領事件として発表されたのである。
救恤品横領事件による、政府、軍のイメージの低下を懸念して政治屋達は、
その事件を暴いたヤン・ウェンリー少佐の手腕を高く評価し褒め称えなければ成らなかった。
その褒め称える政治屋はかなりの人数が、自らに火の粉が来ることなく終わった事に安堵感を得ていた。
又一部の者達は旨く始末できたとほくそ笑んでいたのである。
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