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広報官トーゴー ───最後の卒業生───
広報官トーゴー ───最後の卒業生───
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問状はいいとしても、すべて返答も書いてあるのだ。
「不満か? 直してもいいぞ。直したものを見せてもらうが」
「検閲ですか」
「人聞きの悪いことを言うな。添削と言え、添削だ。英雄が恥をかかないように。で、実際のところどうなんだ?」
「……このままで、いいです」
 どの答えも、軍人としてはこう答えるしかない、これ以上のものを考えるのは無理だった。また当時の心境としてもほぼその通り、状況もまるでその場にいたかのようだった。
 もっとも質問事態が厳選されたありきたりなものばかりだったこともある。
 当然不満はあがったが「芸能人のスキャンダルと一緒にするな。軍人にいったい何を聞きたいんだ? 軍には機密事項が山ほどあるのは知っているはずだ」トーゴーは一喝した。
「こーゆーことにも興味があるらしいぞ」
 ボツにした質問状をヤンに見せる。
「…………これは、ちょっと……」
 それはリンチの行為についてどう思うか、を始めとした逃亡した者に関するものと、ヤン自身の生年月日はいいとしても、極プライベートに関わるもので、恋人の有無から好きな女性のタイプ、休日に何をしているのか、最近見た映画は?など軍人に聞く必要があるとは思えないものばかりだった。
「士官学校時代の成績については、学校側は提出してもよいと言ったがこちらで断った」
「……すみません」
「改竄するわけにいかないからな」
 トーゴーは戦史研究科を次席で卒業した。ヤンも首席や次席まででなくとも「優秀な成績で」と言えればよかったのだが、ごくごく普通だった。戦略だけなら「そこそこ優秀な成績」だったが、射撃など落第点すれすれの科目も多く、よい部分だけをクローズアップすると「軍は都合のいい発表しかしない」というトーゴーたちが避けたい事態を招いてしまう。
 もちろん嘘ではない、隠したわけではない、たまたま公表する機会がなかっただけだ、は得意技ではあるが、ヤンの成績で使うのは難しい。
「恋人の有無は残すか?」
「いいえ」
「せっかくだから好みのタイプの女性だけでもどうだ? 申し込みが殺到するぞ。バーラト星域に放送されるというからすごいことになるだろうが」
「けっこうです」
「いい話だろう? 階級からだいたいの年収もわかるし、さすがに同時放送は無理だから時間差はあるな。ゆっくり吟味できる」
「けっこうの意味が違います」
「わかっているさ。でもそうでもしないと彼女いない歴=年齢になるんじゃないかと思って」
「…………」
「図星だろ」
「……違います。私だって」
「おおっ、そいつは初耳だ」
 初耳も何も、トーゴーが卒業してから挨拶以外で話したのは先日が初めてである。
「いいな、ぜひそれは入れよう」
「いやです。だいたい昔のことですし」
「相手の名前を公表しろとは言わないさ。イニシャ
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