第94話 夕暮れと笑顔と儚さと
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と同様にイカダから転落し、ブクブクと泡を立てながら水上で気絶してしまう。
傍から見れば、まるで男性陣が手酷くハブられたような絵面である。女性陣ーッ! てめぇらの血は何色だァーッ!
「……そっか。ふふ、そうだよね。龍太君の作った、イカダなんだから」
「四郷って、なんやかんや言うたって、やっぱり人間らしいとこあるんやな。しんどそうやったのに、久水と救芽井を助けとるとことか見てたら……なんか、どっかの誰かに似とるような気がしたんよ」
あんまりな扱いに憤慨する俺を尻目に、彼女達は和気藹々と何かを語り合っている。
うまく聞き取れないが――救芽井と矢村は、四郷の言葉にどこか共感する部分があったらしい。「ああ、そうか」という具合に、二人とも妙に納得したような表情を浮かべている。
「……不思議ね。物理的には私達とはまるで違う存在なのに、考えてることはまるで一緒なんだもの。人と違うのは身体だけ、っていう話も、今ならわかる気がするわ」
「……わかるの……?」
「今はまだ、ちょっとだけやけどな。でも、もっと仲良くなれそうな、そんな気は確かにする。……あんたのこと見よったら、いつか『ライバル』になりそうな気もするんやけどな」
同じ時間を長い間過ごした結果は、相手を好きになるか嫌いになるか、という枝分かれが明確になりやすい。
まだ途中経過に過ぎないだろうが……今のところ、彼女達の関係は前者に傾いていると言っていいだろう。救芽井の温かな眼差しと、矢村の人懐っこさが滲む目つき。あんなもの、余程通じるものを感じなければ、到底お目にかかれるものではない。
「……ライ、バル……」
矢村に何か言われたのか、四郷はハッとして一瞬だけこちらに視線を向ける――が、ボッと顔を赤くしたかと思うと、すぐさま顔を向こうへ逸らしてしまった。……なんだろ? 「あっち向いてホイ」でもしてるのか?
「……あなた最低ね」
「何がッ!?」
――と考えていたところへ、こちら側の端に腰掛けていた所長さんが、醜い家畜を眺めるような目つきで毒を吐いて来る。
「全く、乙女の儚――いえ、精一杯な恋心をなんだと思ってるんだか。婚約者さんもきっと泣いてるわよ」
「精一杯な恋心って……話が全く見えて来ないんだけど」
「はぁ〜……あなたったらホントにもう……」
急にカテゴリーエラーな話題を持ち込まれ、なんのこっちゃと戸惑う俺を前に、所長さんは掌を額に当ててため息をついた。まるで、「ダメだこいつ、早くなんとかしないと……」という意思を全身で表現しているかのように。
――恋心、ねぇ。その手の話になると浮かんで来るのは、救芽井だったり久水だったり矢村だったり……。あぁ、ダメだダメだ、意識したらなんか喋りづらくなるッ!
……だけど、四郷は確
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